井浦新が『DOPE』で放つ異色の存在感 “心の演技”がキーパーソンを任され続ける理由に

井浦新が『DOPE』で放つ異色の存在感

 そして、大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)で演じた藤原道隆は、華やかな藤原家の嫡男として登場しながら、徐々に権力への野心を剥き出しにしていく役柄だ。井浦は、当初の穏やかな振る舞いの奥に潜む冷徹さや、自らの家門の繁栄のみを願う執念を表現し、作品世界に重厚な陰影をもたらした。

『光る君へ』井浦新の恐ろしい形相は道隆のすべてを物語っていた “家”に執着し続けた最期

『光る君へ』(NHK総合)17回「うつろい」。一命をとりとめたまひろ(吉高由里子)は、道長(柄本佑)が夜通し看病してくれたことを…

 映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』で見せた演技も印象深い。井浦が演じたのは、自らの犯した“あやまち”を露伴に告白する謎の男・田宮。映画オリジナルのキャラクターでもある。

『岸辺露伴は動かない 懺悔室』©2025「岸辺露伴は動かない 懺悔室」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 この役柄を演じるにあたり、渡辺一貴監督は、井浦が仮面をつけて芝居をするうちに外した後も同じ表情になっていたというエピソードを明かした。「自然とそうなっちゃうんです」と語る井浦の言葉から、役への没入ぶりが伺える。(※1)憑りつかれたような表情や、どこか常軌を逸した雰囲気は「怪演」と呼ぶにふさわしく、強烈なインパクトだった。

 井浦の演技は、自身の心の動きを演技を通してこちらに見せているから、複雑な役柄でも説得力が生まれるのだと感じる。井浦自身、俳優としての歩みについて、次のように語っている。

 「俳優としての生みの親でもある是枝裕和監督からも、育ての親の若松孝二監督からも『表面的な芝居をしない』ことを教わってきました。役を心の芝居で演じ、自分の心がどう動いたかを見せてくれ、と言われてきたんです」

 また、初のアメリカ映画デビュー作となった『東京カウボーイ』では、マーク・マリオット監督から「君の芝居を観ていると、その世界に存在している人にしか見えない。君は本当に芝居をしているのか」とオファーを受けたことを明かしている。(※2)

 こうした歩みを持つ井浦が、『DOPE』のジウではどう見せてくれるのか。変装を重ね、様々な顔を見せる予測不能なキャラクター。謎めいた行動の背後には、どのような目的や過去が隠されているのか。一見するとトリッキーな役柄だが、井浦ならではの深い解釈と表現が込められているはずだと、つい期待してしまう。

『DOPE 麻薬取締部特捜課』©TBS

 変幻自在な表現力から生まれる奥深い魅力に今後も目が離せない。ジウの真意が明らかになった時に、私たちは何を感じるのだろう。きっと、こちらの期待を良い意味で裏切ってくれるのではないか。

参照
※1. https://www.cinematoday.jp/news/N0148935
※2. https://bunshun.jp/articles/-/71284

『DOPE 麻薬取締部特捜課』の画像

金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』

木崎ちあきが手掛けた同名小説を原作を実写化した麻取アクション・エンターテインメント。謎に包まれた新型ドラッグ“DOPE”が蔓延している近未来の日本で、正反対のバディがDOPEによって巻き起こる不可解な事件の解決に挑んでいく。

■放送情報
金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:髙橋海人、中村倫也、新木優子、三浦誠己、豊田裕大、久間田琳加、忍成修吾、入山法子、佐野和真、蒼戸虹子、小池徹平、真飛聖、伊藤淳史、井浦新
原作:木崎ちあき『DOPE 麻薬取締部特捜課』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA刊)
脚本:田中眞一
演出:鈴木浩介ほか
プロデュース:長谷川晴彦、佐藤敦司
音楽:内澤祟仁
主題歌:Uru「Never ends」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
編成 :杉田彩佳、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/DOPE_tbs/
公式X(旧Twitter):@dope_tbs
公式Instagram:@dope_tbs

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