やなせたかし&暢が『あんぱん』をもし観ていたら? やなせスタジオ代表・越尾正子に聞く

やなせスタジオ代表・越尾正子に聞く

やなせたかしといずみたくの関係性

――やなせさんは戦後、作曲家・いずみたくさんと多数の作品を合作されています。ドラマではMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんが演じられますが、おふたりのご関係についても教えてください。

越尾:いずみたくさんとは、やなせ先生が舞台美術を担当していた『見上げてごらん夜の星を』のミュージカルで知り合って、「手のひらを太陽に」で作詞家と作曲家としてのお付き合いが始まりました。その後、『詩とメルヘン』という雑誌に「0歳から99歳までの童謡」として毎月ふたりで童謡を作り、楽譜を掲載していたんです。「小学生向け」といった年代別ではなくて、0歳から99歳までの童謡を作りたい、という思いがあったのですが、これはヒットしないし収入にもつながらない。でも、いずみたくさんはやなせ先生の気持ちを察して続けてくれました。やなせ先生がいずみたくさんを気に入っていたのは、言葉を大切に作曲してくれるから。いずみたくさんは人気絶頂の頃にもクラシックの作曲について勉強をされるような努力家で、やなせ先生はそういうところをすごく信頼していたんですね。「曲が良くて人気があるから」というだけではなくて、そういう本質的なものを大切にお付き合いしていたというのが、おふたりの関係だと思っています。

――第1回の冒頭シーンのように、最後には越尾さんが実際に接していた世代ののぶ、嵩も描かれると思います。「こんなシーンが観たい」と期待されるようなことはありますか?

越尾:やなせ先生は94歳で亡くなったので、6カ月間という放送期間を考えると最後までは映らないんじゃないかなと。ですから、「私の出番はない」と決めています(笑)。そうなると、おそらくこれは描かれないとは思うんですが、やなせ先生はいろんなパーティやコンサート、ミュージカルの脚本・演出も担当していました。「いつまでもこんなものを書いて、しょうがないやつだな。それでも俺が書かなくちゃいられない。困った性格だよ」なんて言いながら台本も書かれていたので、そういったコンサートやパーティのちょっとした演出が、どこかでもう一度見られたらいいなと思っています。

――もしも暢さんがご存命だったら、『あんぱん』にどんな感想を持たれると思いますか?

越尾:「たかしさんを素敵な俳優さんが演じていてくれている」と喜ぶと思いますが、「綺麗すぎよ」とも言うかもしれません(笑)。2人はそういうことをはっきりと言い合える仲なので、そんな話をしているんじゃないかな、と想像しています。やなせ先生は、きっと「(のぶ役が)美桜さんでよかったな」と言っていると思いますよ。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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