クラーク・ケントが現実世界にいる! 『スーパーマン』を唯一無二の傑作にした実在感

ジャーナリストのヒロインといえば、猪突猛進に事件に首を突っ込んではピンチに陥り、主人公に活躍の場を与える舞台装置的な扱われかたをされることがままある。特定の作品を指すわけではないが、正直人間の、女性の知性を信じていないキャラクター造形と言える。本作のロイス・レインはジャーナリストとして最善の行動を心がけ、同僚やスーパーマンの友人(ジャスティス・ギャング)と協力して行動する。ミスター・テリフィックとのシーンは決して猪突猛進のヒロインがヒーローに活躍の場を提供しているわけではない。それぞれが己の持てる力を使い、最善の行動をしているだけだ。彼女にとってはペンこそが最大の力なのだ。無論、この映画は「女はペンを持ってろ」ということを言っているわけではない。少なくともホークガール(イザベラ・メルセド)が本作において大切な暴力を司っていることからもそれは明らかだ。

とまあ、こんな感じで本作はそういったテーマ的な部分を含めてとんでもなく面白いし細かい部分が上手い。中盤あたりで刑務所にブチ込まれる理由が「スーパーマンとしての公平性……」みたいな理由じゃなくて、「犬、助ける!!!!」だったのがスッパリしていてよかった。実際、明白でカスみたいな謀略にわざわざ付き合う必要はない。そういった部分に囚われすぎず命を守ることに全力なのが本作のスーパーマンだ。

スーパーマンはとんでもない力の持ち主で、理想の体現者だ。とはいえ、最初に述べた通り『スーパーマン』で一番美しいのはクラーク・ケントが本当にいるように感じられることだ。スーパーパワーをもった超人ではなく、ひとりの人間として。本当に自分の教室にいたような実在感。あの日の休み時間、一緒にバトエンや消しゴム落としをやっていたような男が迷い傷つきながらスーパーマンをやっている。だから、我々もやらねばと思えるのだ。本作における実在感とはつまるところ、我々の心にスーパーマンを宿してくれる灯火である。
■公開情報
『スーパーマン』
全国公開中
出演:デヴィッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト、エディ・ガテギ、ネイサン・フィリオン、イザベラ・メルセド、スカイラー・ギソンド、ウェンデル・ピアース、ベック・ベネット
監督:ジェームズ・ガン
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:superman-movie.jp





















