『グレンラガン』カミナから『鬼滅の刃』宇髄天元へ 小西克幸演じる“兄貴キャラ”の魅力
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の公開を控え、フジテレビ系では“土曜プレミアム”枠でTVアニメの特別総集編が7週連続で放送される。物語の核心へと向かうクライマックスにあわせて、再びあの音柱・宇髄天元がスクリーンにもお茶の間にも帰ってくる。その豪快さと華やかさをスクリーンに刻むのが、小西克幸だ。
「派手を司る男」として数々の名台詞と名シーンを生んだ宇髄だが、彼の魅力を声だけでしっかりと受け止め、さらに引き上げているのが、小西の圧倒的な演技力だろう。大仰で豪放に見えて、内面には静かな覚悟や弱さも隠れている。そんな多層的なキャラクターを「声」で表現できるからこそ、宇髄は多くのファンに「小西さん以外考えられない」と思わせる存在になった。
小西といえば、やはり『天元突破グレンラガン』のカミナを思い浮かべる人も多いだろう。どこまでも真っ直ぐで、熱くて、頼れる“兄貴”。主人公のシモンを背中で引っ張り続ける存在感は、今でも多くのファンの原点だ。
『鬼滅の刃』における宇髄は、そんな“兄貴キャラ”の進化形と言えるかもしれない。忍びとして生きてきた彼があえて派手を名乗り、誰よりも目立つのは、地味で暗い過去を跳ね返すため。派手なセリフの奥には、兄弟との死別や壮絶な覚悟が潜んでいる。小西は、派手な装飾の奥に眠る陰の部分を丁寧に含ませながら、あの豪快な台詞回しを成立させる。カミナの真っ直ぐさと、天元の計算されたカリスマ。似ているようで全く違う“熱”を、声だけで描き分けてきたことが、小西の面白さだ。
宇髄の戦闘シーンを思い浮かべると、刀のぶつかる音や爆発音の向こうから、小西の荒い息遣いや叫びがしっかり届いてくる。妓夫太郎との死闘では、毒に侵されながら戦う苦しさが息の震え一つにまで滲んでいた。舞台での経験や、殺陣を得意とする小西の体感的な演技は、こうした激しいアクションを声だけでリアルに感じさせる理由の一つだろう。同じく『ゴールデンカムイ』の鯉登少尉では、薩摩弁の超高速セリフをテンションそのままに言い切る“猿叫”を披露。これも、体ごと役に入っているからこそ成立する技だ。
もちろん、小西の魅力は熱血だけではない。『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』のディアボロは、絶対的な支配者としての冷たさと、自分の正体を隠し続ける狂気を合わせ持つ男。小西は、その低く張り詰めた声で、王としての威圧感と、内側の疑心暗鬼を一つにして見せた。一方、『薬屋のひとりごと』の高順では、常に冷静沈着で主に忠実な側近を演じ、落ち着いた低音が物語に一本の柱を立てている。熱血と冷徹の両極を無理なく行き来できるのは、小西克幸という声優がどんな役でもまっすぐで正直だからだろう。