『なんで私が神説教』終盤に意外な配役 波乱を呼ぶ“不登校生徒”萩原護の巧みな演技力
広瀬アリスと志田未来の熱演で存分に見応えを感じさせて、一区切りついたように見える『なんで私が神説教』(日本テレビ系)。一方で、第8話のラストでは不登校だった脇坂春樹(萩原護)の姿がはじめて描かれ、青のメッシュが混じった派手めな髪型と名新学園を見つめてニヤリと歪む口元など、不穏な空気を漂わせたまま幕を閉じた。
正直、萩原護が終盤に波乱を巻き起こす生徒を演じるのは意外だった。萩原といえば人畜無害そうな純朴な青年を演じるイメージが強かったからだ。例えば、『ホットスポット』(日本テレビ系)の上村貴博役。受験勉強の追い込みのために主人公・遠藤清美(市川実日子)が務めるレイクホテル浅ノ湖に長期滞在する受験生の上村は、レイクホテル浅ノ湖の従業員たちから一心に応援される立場だった。受験を前にした硬い表情、受験会場で受験票を探して焦る仕草や両親を連れてホテルにお礼にきたときの穏やかな笑みなど、好青年という言葉がよく似合う芝居を見せており、視聴者も一緒に彼の受験を応援していたことだろう。また、終盤には小日向文世が演じる村上博貴と同一人物であることが明かされるが、50年後に小日向になることへの説得力も大きかった。
2025年春クールでは、『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)に吉田明役として出演。村上虎朗(一ノ瀬ワタル)が働く居酒屋のバイト店員として、虎朗の良き話し相手だった。実は原作小説では吉田が虎朗を困らせる場面も多々あったが、ドラマではほとんどなかった。その代わり、虎朗が心情を吐露する相手として、時には悩み始めるきっかけとなる存在としても機能しており、虎朗が何を考えているのかを視聴者相手に明確にするために重要な役柄だった。萩原が演じたことで“虎朗がなんでも話してしまう相手”としてフィットしていたと言えるだろう。
『なんでわたしが神説教』と同じく学生役を演じた『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)では、リーダー格の相楽(加藤清史郎)に部室を占領される日暮有河を演じた。うわずった声で担任教師・九条里奈(松岡茉優)に反論する姿には日暮が持つ優しさと気の弱さがよく表れていた。そして九条に心を動かされて、相楽に反旗を翻すシーンでは、視線を逸らさず、真っ直ぐ前を見つめるその力強さ、「僕たちに関わらないでください!」という声の切実さから、日暮が成長・変化したことが伝わってきた。いじめに対する反抗の形として、胸のすく思いがした場面だ。
萩原は誰にでも優しそうな素直さ溢れる人物がよく似合う。そして、その雰囲気を作風や役柄の役割にあわせて自在に調整することもでき、近年は適材適所な俳優として重宝されているのが分かる。