『信長協奏曲』が象徴する小栗旬の転換期 “イケメン若手俳優”が大河主演を果たすまで

 小栗が演じる“リーダー”は、確固とした考えやゴールがあるタイプではなく、何かを決断する上で直面する迷いや苦しみを隠さない、ないしは隠せない人間らしさがあることが特徴的だ。大きな組織の上に立つ人間として、意思が強いふりや力があるふりをすることは簡単にできる。だが、その裏で大きくなっていく不安や自身の弱さを他人に見せることは、恥ずかしさやみっともなさに打ち勝つことができるという証拠。小栗は、人としての弱さもしっかり表現しながら“本当の強さ”を演じることができる俳優だろう。

 本作で登場する信長は、最初は跡継ぎ争いから逃れるためサブローに身代わりを頼むほどの“逃げの姿勢”を見せているし、サブローもそれほど真面目ではない。しかし、ノリで身代わりを引き受けたサブローは次第に“信長”として生きることにしっかり向き合いはじめ、本物の信長はサブローの持っていた教科書によって自らの運命を知ることになるが、最終的にはそれを受け入れて戻ってくる。それぞれの人物の決心を、小栗は1人で細やかに演じ分けている。そして、このサブローと信長の心情の変化に、現在の小栗が見せる人間らしいリーダー像の一端を垣間見ることができる。本作は、今の小栗の“原点”が見られる作品なのかもしれない。

 6月13日に公開される、新型コロナウイルスの集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号での出来事を題材とした映画『フロントライン』では、市民病院で働きながら、神奈川の医療危機対策統括官も務める医師・結城英晴を演じる小栗。ここでも緊迫する状況で決断を迫られる“リーダー”を演じることになる。そして、2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合)では、再び織田信長を演じることも決定している。きっと今後も、小栗が見せる“リーダー”としての姿に魅了されるのだろう。

■放送情報
『信長協奏曲』
フジテレビ系にて、6月7日(土)21:00〜放送
出演:小栗旬、柴咲コウ、向井理、藤ヶ谷太輔、水原希子、濱田岳、古田新太、高嶋政宏、山田孝之
原作:石井あゆみ『信長協奏曲』
脚本:西田征史、岡田道尚、宇山佳佑
監督:松山博昭
音楽:☆Taku Takahashi(m-flo)
主題歌:Mr.Children「足音 ~Be Strong」
©石井あゆみ/小学館 ©2016 フジテレビジョン 小学館 東宝 FNS27社
公式サイト:nobunaga-concerto-movie.com

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