実写版で“表情”まで再現 『ONE PIECE』チョッパー役に抜擢、ミカエラ・フーヴァーとは?
そんなフーヴァーに回ってきた大役が、7月11日に北米や日本で公開となるガン監督の『スーパーマン』のキャット・グラント役だ。主人公のスーパーマンがクラーク・ケントとして務める新聞社、デイリー・プラネット社でコラムニストとして働く女性で、ボディコンシャスなファッションを身に付けたキレものといったイメージで描かれることが多い。
公開されている『スーパーマン』の予告編に一瞬だけ登場するキャットと思しき人物も眼鏡をかけたクールな美女といった雰囲気。演じることについて尋ねられたフーヴァーが、コミックに登場するキャットと自分には共通点があると話すインタビューも公開されている(※)。もっとも、そのインタビューの声はハイトーンで愛らしく、チョッパーを演じる俳優と同一人物だと感じとれる。下積み生活を重ねて育んだ演技力を実写版『ONE PIECE』で発揮したことで、チョッパーになりきってみせたことがさらなる大役を掴んだ背景にありそうだ。
声だけではなくその豊かな表情も、チョッパーというキャラの造形に大いに反映されている。3DCGで描かれている実写版『ONE PIECE』のチョッパーだが、顔の演技に関してはフーヴァー自身が演じたものをフェイシャルモーションキャプチャーの技術で取り込み、チョッパーに反映させている。見開かれたと思ったらきょろきょろと動き、グッとしぼられニカっと笑うその目の表情も、懸命に話して褒められてゆるむ口元の動きもおそらくはフーヴァーから取られたものだろう。
人間ならすこし眉をひそめるだけ、口角を上げるだけで表情を作れるが、チョッパーのようなパーツが大きい架空のキャラクターは、目も口もそれなりに動かさなければ表情として出にくい。フーヴァーが選ばれたのは、声による演技に加えて顔立ちがはっきりとしていることも理由にあるのかもしれない。
比べてみると、元のフーヴァーの顔と、チョッパーの顔には目と口の位置関係に重なるところが感じられる。実写版『ONE PIECE』のシーズン2でチョッパーが大活躍した後、映画やテレビドラマにフーヴァーが出演すると、そこに逆にチョッパーが見えてしまうようになるかもしれない。
日本で実写版『ONE PIECE』の配信が始まった時、日本語の吹き替えはアニメと同じ声優陣がほとんどそのまま担当した。ルフィは田中真弓、ナミには岡村明美、ロロノア・ゾロは中井和哉。実写版ではまだ若い新田真剣佑がゾロを演じているだけに、その声がベテランの中井というのもなかなか興味深い組み合わせだった。チョッパーもほかのキャラたちと同様に、アニメ版と同じ大谷育江が演じることに期待したい。
実写版『ONE PIECE』アニメ声優の吹き替えは大成功 要点はリアルな人間へのチューニング
アニメ作品の実写化は、近年ではそう珍しいことではない。しかし今、アニメ版から実写版まで同じ声優が出演する異例の作品が注目を集めて…アニメ版『ONE PIECE』は世界でも放送や配信が行われていて、英語による吹き替えも存在する。大谷が全世界共通で演じている『ポケットモンスター』のピカチュウとは違って、言葉を話すキャラクターだけに、英語版では主に声優として活動するブリーナ・パレンシアがチョッパーを演じている。日本のアニメの吹き替えも多く担当していて、細田守監督の『サマーウォーズ』では篠原夏希、『ヒナまつり』ではヒナ、『ゾンビランドサガ』では源さくらといった主役級のキャラクターを演じて定評がある。
英語のアニメ版を楽しんできた人には、チョッパーの声ならパレンシアといった意識が強くあるかもしれないが、実写版については声優としての優れたスキルだけではなく、女優として表情や仕草も含めた演技を長くこなしてきたフーヴァーが見せる豊かな表情が必要だったのかもしれない。実写という世界で生身の俳優たち以上の演技力が要求されるチョッパー役に選ばれたということは、それだけフーヴァーが優れた女優だという証明だろう。
参照
※ https://www.youtube.com/watch?v=42jPRsC6iqw
■配信情報
Netflixシリーズ『ONE PIECE』シーズン2
2026年世界独占配信
出演:イニャキ・ゴドイ(モンキー・D・ルフィ役)、新田真剣佑(ロロノア・ゾロ役)、エミリー・ラッド(ナミ役)、ジェイコブ・ロメロ(ウソップ役)、タズ・スカイラー(サンジ役)、イリア・アイソレリス・ポーリーノ(アルビダ役)、ジェフ・ウォード(バギー役)、マイケル・ドーマン(ゴールド・ロジャー役)
共同ショーランナー/脚本家/製作総指揮:マット・オーウェンズ&ジョー・トラッツ
エグゼクティブ・プロデューサー:尾田栄一郎、マーティ・アデルスタイン、ベッキー・クレメンツ(トゥモロー・スタジオ)、藤村哲哉、クリス・シムズ、スティーヴン・マエダ
©尾田栄一郎/集英社