『おとなになっても』山本美月×栗山千明から目が離せない 綾乃の“正直”な恋心の行方は

「皆さんは、将来どんな大人になりたいと思いますか?」

 Huluオリジナル『おとなになっても』第1話は、そんな問いかけから始まる。

 第6話では、小学校教師の主人公・綾乃(山本美月)が、朱里(栗山千明)に別れを告げられて泣いている場面が描かれる。それを目撃した生徒・新田真夏(桑原広佳)が、もう1人の生徒・永瀬友花(安藤セナ)のところに戻り「先生も泣くんだね」と驚きながら呟いたように、「おとなになっても」彼女たちは恋をする。人生の岐路に立たされて迷う。時に涙する。「一度決心すると一直線」な綾乃の恋は、周りのたくさんの「おとな」たちの人生そのものを揺り動かして、観ているこちら側の心まで揺さぶってくる。

 Huluオリジナル『おとなになっても』がHuluにて独占配信中だ。原作は「おとなの女性同士の恋愛」を描いた志村貴子の人気コミック『おとなになっても』(講談社『Kiss』所載)。『晩餐ブルース』(テレビ東京系)の灯敦生をはじめ、丹保あずさ、合田純奈が脚本を手掛け、『461個のおべんとう』の兼重淳、『ドーナツもり』の定谷美海が監督を務める。何より原作にできるだけ忠実であることを意識し、常に原作を傍らに置いた状態で臨んだという本作は、綾乃と朱里という2人の女性の恋模様を美しく魅力的に描くばかりでなく、彼女たちを取り巻く登場人物たちが抱える様々な人生の問題にも丁寧に向き合っている。何より、綾乃と朱里を演じる山本美月と栗山千明がいい。山本が演じる、フワフワとした優しい雰囲気の中に自分の意志を貫き通そうとする確固たる意志を感じさせる女性・綾乃。一方の栗山演じる朱里は、クールな見た目の裏で、綾乃に翻弄されて零れ出る本音の数々が愛おしい。

 小学校の教師で既婚者の綾乃が、久々に立ち寄ったダイニングバーで朱里と偶然出会うところから物語は動き始める。2人が初めて出会ったとき、綾乃が既婚者であることを知らず声をかけた朱里に対し、綾乃は「女の子がいける口かはわかりませんが、あなたはすごく素敵な人だと思います」と答え、帰り道に綾乃からキスをする。瞬く間に朱里は綾乃に夢中になる。しかしある日、朱里が働くダイニングバーに夫・渉(濱正悟)とともにやってきた綾乃に衝撃を受けるのだった。

 「おとなの恋」は厄介だ。でも、時に恋は、自ら蓋をしていた過去の記憶を呼び覚まし、新しい人生へ足を一歩踏み出すチャンスをくれることもある。朱里は綾乃と出会うことで、引きずっていた過去の恋愛を断ち切り、美容師として再び働くことを決意できた。綾乃も、朱里との出会いを通して、夫との間に、妊活や義母との関係をめぐって生じてしまっていた長年のすれ違いに気づく。さらに、担任をしている女子生徒2人の様子を見守ることを通して、それまで蓋をしていた、自身の学生時代の同性の友人に対する初恋の記憶が甦り、それまで気づいてさえいなかった、本来の自分を取り戻そうとしている。

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