『卓球少女』が描く“中国2Dアニメ”の可能性とは? アニプレックスPをうならせたこだわり
キャスト起用の背景
麻倉もも×雨宮天×夏川椎菜、日中アニメとTrySail新曲語る 「私たちに歌いきれるかな?」
『卓球少女 -閃光のかなたへ-』の公開記念舞台挨拶が5月17日に新宿バルト9で開催された。登壇したのは、ジャン・ルオイ役の夏川椎…——そうしたキャラに、日本語吹替版で夏川椎菜さん、雨宮天さん、麻倉ももさんをキャスティングしたことで、ユニットのファンやそれぞれの声優のファンが関心を持つ作品になりました。やはり狙っていたところがあったのでしょうか?
孫:もちろんユニットでの起用は意識していましたが、細かい配役は音響監督の横田千加子さんといろいろと相談しながら決めていきました。皆さんやはりプロでとても上手な方々なので、しっかりと役にハマる演技をしていただけました。夏川さんが演じるジャン・ルオイはあまり喋らないキャラで、夏川さんがこれまで演じてきた役とは少し違ったタイプでしたが、結果的にうまくハマったと感じています。
——雨宮さんのワン・ルーは負けん気の強いところ、麻倉さんのリ・シントンは明るくて卓球好きなところがよく出ていました。ディン・シャオの戸松遥さんも才能豊かで勝手気ままなところがピッタリでした。
孫:戸松さんはアフレコの時に最初から全開で来られて、すごく良いなあと思いましたが、あまりアクセルを踏みすぎると他の3キャラを食ってしまう気がしたので「もうちょっと抑え気味にして」とお願いしたくらいです(笑)。ジャン・ルオイは逆にあまり喋っていなくて存在感が薄くなってしまうので、もう少しキャラが立つような感じで調整をお願いしました。そうした細かな調整は音響監督の横田さんと相談して行い、全体的にはイメージ通りに仕上がったと思います。
——「TrySail」にはオープニング主題歌の「アストライド」も歌ってもらいました。スポーツに挑む少女たちを描いた歌詞も明るい楽曲も作品にピッタリでした。
孫:王道ですよね。書き下ろし楽曲をお願いするときに、作品の雰囲気を説明して何パターンかデモをいただき、そこから「最近こういった王道系の楽曲はあまりなかったから」ということで、制作サイドで話し合ってこの曲に決めました。聴いた方の評判も良いようで嬉しく思います。中国で配信されたアニメにはついていないので、中国の「TrySail」ファンの方も聴きに来てくれたら良いですね。5月23日からは日本で、中国語音声・日本語字幕版の上映が始まりますが、それにも「アストライド」がそのまま付くので、日本にいる方には聞いてもらえると思います。
——やはり初動はキャストのファンやアニメ好きの方が観に来てくれている感じですが、卓球のことがリアルに描かれているということで、卓球好きの人にも観てもらいたいですね。
孫:卓球ファンでアニメも観るという層は、必ずしも重なっているものではないと思いますが、そういう人でも楽しめるエンタメ作品になっているので、ぜひ観ていただきたいですね。卓球自体、以前と比べて日本でも人気が出てきていると思います。そこにこの作品が評判になることで、日本の卓球ブームがさらに盛り上がっていってくれたらと思っています。
——そうなっていけば、全国に拡大上映されていくかもしれませんね。
アニプレックスと中国アニメ産業とのつながり
孫:アニプレックスが以前に手がけた『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』も、評判が上がっていく中で上映規模が拡大していきました。『卓球少女』でも同じようなことが起こるかもしれません。それにはやはり大勢の方に観ていただくことが必要です。何回でも楽しめる作品なので、今ある劇場に通っていただける方が増えることで皆さんの地元でも上映されるようになるかもしれません。頑張って続けていくので皆さんもよろしくお願いします。
——日本で評判になれば、もしかしたらこの続きも作られるのではといった期待もふくらみます。
孫:これからの展開に期待を持たせた終わり方で、そこで十分お話は伝わりますが、人によっては不完全燃焼のところもあるかもしれません。ライバルキャラにはすごく魅力的な女の子たちが揃っているので、そうしたキャラたちが卓球をするところを、私自身も観てみたいと思っています。
——応援していきたいです。アニプレックスではこの作品より前に、『羅小黒戦記』や『魔導祖師』『万聖街』といった中国作品を日本に紹介してきました。中国とのつながりを強化していこうといった思いからパイプを太くしているのでしょうか?
孫:やはり利益が出せるかどうかは重要で、それは北米の作品であろうと中国の作品であろうと同じであると考えています。ただ、人とのつながりは重要で、『卓球少女』でもそれまでの繋がりから、中国のスタジオサイドに接触して生の状況を知ることができました。
——中国で大ヒットしているアニメ作品というと、21億ドルという中国の映画史上で最も多い興行収入を稼いだ『ナタ 魔童の大暴れ』のような作品が浮かびます。
孫:中国では伝統的に誰もが知っている題材ということで『封神演義』が選ばれるところがあると思います。それはそれで面白いのですが、日本人に馴染みがあるのはどちらかといえば『三国志』のほうで、『封神演義』モノをそのまま持ってきても当たるとは限りません。卓球のほうが日本にとってはなじみやすい題材だったと思います。スポーツものは中国でもそれほど多くはなかったようですが、卓球についてはやはり国技とも言えるものですから勝算があったのかもしれません。こうした作品が出たことでこれからいろいろと作られていくのではないでしょうか。
——こうして日中のアニメ産業が交流を進める中でお互いに良いことが出てきていると感じていますか?
孫:アニメ制作における日本と中国の交流自体は、動画の仕上げを中国のスタジオにお願いするなど産業レベルでの関わり合いはずっとあったかと思います。しかし、最近は中国のクリエイターがゼロから作ったものが、日本のクリエイターの目に触れて、お互いに前とは違った見方をするようなことが起こっています。『羅小黒戦記』でもそうしたことが起こりました。そうやってクリエイターが相手の作品を観られる状況になって、コラボレーションが行われるようなことが、今もすでにありますが、これからも出てくるのではないでしょうか。時代は大きく変わっています。そうした作品がこれから出てくるのが楽しみですね。
■公開情報
『卓球少女 -閃光のかなたへ-』
全国公開中
原作:画枚動画
監督:佳菲
プロデューサー:賈雪雯
脚本:渣克、LAX、佳菲
キャラクター設定:羅芸蓓、煎餅果子
演出:黄元哲
作画監督:張志浩、梁博雅
アクション作監:胡博、SMDK
美術監督:濃眉超人、宋廷静
撮影監督:梁博文
音響監督:郭川
音楽 :厳世濤、薛振華
アニメーション制作:杭州画枚動画設計有限公司
<日本語吹替版>
キャスト:夏川椎菜(ジャン・ルオイ役)、雨宮天(ワン・ルー役)、麻倉もも(リ・シントン役)、戸松遥(ディン・シャオ役)、和泉風花(ロン・シャオ役)、石見舞菜香(チェン・ニンニン役)
オープニングテーマ:「アストライド」 TrySail
エンディングテーマ:「色褪せない夢」CHASER 犬舎(不褪色的梦 Japanese Ver.)
音響監督:横田知加子
音響制作:グロービジョン
配給:アニプレックス
協力:面白映画
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