『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪』なぜ賛否両論? 貫かれた“歌で伝える”という姿勢

 さらに、舞台演出や照明、映像表現のクオリティにも言及すべきだろう。ライブ中のコールアンドレスポンスや、肩に棘をあしらったパンク調の衣装は、楽曲のトーンと噛み合わず、ややちぐはぐな印象を受ける場面もあったのは否めない。なかでも、カミュのピエロ風の衣装は、個人的には「これは嶺二の方がキャラ性に合うのでは?」と思わずにはいられなかった。

「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX」OPENING MOVIE|05.09 LIVE START!

 一方で、現実と虚構が交錯するような演出のなかで、観客がたまたま居合わせた4人の怪盗の変化を追体験していく構造には、制作者の確かな意志と熱量が宿っていた。そのスケール感は圧巻で、プロジェクションマッピングをふんだんに用いたステージ演出も含め、劇場で体感するからこその迫力と高揚感があったように思う。

 予想を裏切る展開にあえて踏み込み、挑戦を重ねていく。その姿勢こそが、QUARTET NIGHTのステージに立つ者としての本質なのだろう。定番に甘んじることなく、未知の領域へと向かう姿からは、そんな矜持が感じられた。一方で、これまでのステージの在り方に魅せられてきた者としては、ほんの少し寂しさを覚えたのも事実である。

 とはいえ、どんなグループにも言えることだが、プロのアイドルは、時とともに活動の幅を広げ、挑戦を重ねながら、少しずつ変化していく存在でもある。だからこそ、輝きを保ち続けることができるのだろう。そう考えると、『TABOO NIGHT XXXX』は、QUARTET NIGHTが今もなお“挑戦する姿勢”を忘れていないことを示す、一つの確かな証だったのではないだろうか。

■公開情報
『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX』
公開中
原作:上松範康/ブロッコリー
総監督:古田丈司
監督:関暁子
キャラクターデザイン原案:倉花千夏
キャラクターデザイン:藤岡真紀
CG ディレクター:中島宏
サブ CG ディレクター:大川威
キャラクターモデリングディレクター:宮嶋克佳
音楽:Elements Garden
制作:A-1 Pictures
配給:松竹
製作:うた☆プリ劇場版 TN 製作委員会
キャスト:森久保祥太郎(寿嶺二役)、鈴木達央(黒崎蘭丸役)、蒼井翔太(美風藍役)、前野智昭(カミュ役)
©UTA☆PRI-MOVIE TN PROJECT

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