豊嶋花×清乃あさ姫がみせる演技の成熟 『なんで私が神説教』10代俳優の新たな存在感

 一方、清乃が演じる陽奈は、彩華とは対照的にカースト上位にいるリーダー的存在。強気で華やかで、中心にいることに慣れきったような言動を見せるが、実は誰よりも不安定で脆いキャラクターでもある。

 陽奈は過去に彩華をいじめていた事実を抱えており、退学問題が浮上する中でその過去がクラスに知れ渡る。自らも喫煙に関与していたにもかかわらず、彩華だけが退学処分の対象となったことから、非難の矛先が自分に向くという立場の逆転が生まれる。これまで“責める側”だった陽奈が、初めて“責められる側”に回る瞬間。そこに潜む葛藤や戸惑いを、清乃は多弁ではなく沈黙の芝居で伝える。

 演技においても清乃は、強がりだけではない“余白”を丁寧に描いている。NHK大河ドラマ『どうする家康』では政略結婚に翻弄される少女・おふうを、『366日』(フジテレビ系)では等身大の若者である彩乃を演じ、いずれも自然体の演技で視聴者を引き込んできた。そんな清乃が本作で演じているのは、“自分を正当化しきれない女子”の揺れだ。誰かを守りたい、でも自分も否定されたくない。その矛盾を一つひとつ引き受けていくような繊細な演技が、陽奈というキャラクターに重みと説得力を与えている。

 陽奈は決して単純な「女王様キャラ」ではない。自信と不安、プライドと自己嫌悪、仲間思いな面と自己中心的な面。そのすべてが彼女を形作っている。そして清乃は、それらを否定することなく、まっすぐに役と向き合っている。

 『なんで私が神説教』の魅力の一つは、生徒同士の関係性が一面的ではないことだ。陽奈と彩華も、かつては敵対関係にありながらも、どこかで分かり合いたいという気持ちを抱いている。第5話で描かれた、陽奈が彩華をカラオケに誘うシーンは、その兆しの一端だろう。

 その“変化の兆し”を描くには、演じ手がキャラクターの痛みや願いを深く理解していなければならない。豊嶋も清乃も、それぞれの役の「傷」を芝居の中で滲ませ、説得力のある存在としてそこに立っている。その姿に、観る側は思わず心を預けたくなる。

 子役出身として確かな経験を重ねてきた豊嶋、モデル活動と並行して演技を磨いてきた清乃。それぞれ異なるキャリアを歩んできたふたりだが、共通しているのは、“いまの自分で勝負する”という潔さだ。10代のいまだからこそ出せるきらめきと、演技者としての熱量が、本作の重心を支えている。

 『なんで私が神説教』はこれから、退学問題を軸にクラスの人間関係が大きく動いていく。彩華と陽奈の距離がどう変化していくのか。そしてその変化のなかで、ふたりの演技がどんな進化を見せてくれるのか、最後まで見届けたいと思う。

参照
※ https://www.ntv.co.jp/kamisekkyou/articles/4621vzbdxntl640gdbwv.html

なんで私が神説教

『となりのナースエイド』『イップス』などのオークラが脚本を手掛ける、進学校を舞台とした完全オリジナル作品。他人と本音でぶつかり合えない大人たちに送る新たな学園ドラマ。初の教師役となる広瀬アリスが主演を務める。

■放送情報
『なんで私が神説教』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:広瀬アリス、渡辺翔太(Snow Man)、岡崎紗絵、野呂佳代、小手伸也、伊藤淳史、木村佳乃、堀内敬子
脚本:オークラ
演出:内田 秀実、南雲聖一ほか
チーフプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:藤森真実、白石香織(AX-ON)
音楽:横山克
制作協力:日テレアックスオン
©日本テレビ
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