ゾンビになるのか人間でいるのか 『哭戦 オペレーション・アンデッド』は戦争映画として秀作

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、バウアーのYouTubeが1週間の癒やしの石井が『哭戦 オペレーション・アンデッド』をご紹介します。

『哭戦 オペレーション・アンデッド』

 2024年、3位からクライマックスシリーズを勝ち抜き、日本一に輝いた我が横浜DeNAベイスターズ。2025年は正真正銘の日本一になるべく、チームもファンも誰もが今年こそはリーグ優勝と決意して開幕したものの、ロケットスタートはならず。まだまだ先行きはわかりませんが、今年も嬉しい思いも辛い思いも味わう期間がやってきたなと思うこの頃です。

 近年こそ強いチームになってきたベイスターズですが、負けることも多かっただけに、他のチームのファン以上に絶望もしてきたし、「明日こそは」「来年こそは」と希望も抱いてきました。そんな思いの象徴とも言える応援歌「ライジング」の歌詞は、〈熱く 熱く 立ち上がれ〉で締めくくられます。

 ということで、無理矢理な導入です。希望と絶望のループに慣れ、立ち上がることになれているベイスターズからつなげる形で、今回紹介したいのが絶望から立ち上がる者たちの物語『哭戦 オペレーション・アンデッド』です。舞台は第二次世界大戦中のタイ。少年兵たちが戦場でゾンビと化し、家族や恋人、そして自分自身とも向き合っていくという、ちょっと変わったゾンビ映画……というか戦争映画です。

 映画冒頭はかなりゆるい感じの描写も多く、ギャグマンガばりの少年兵と指導教官のやり取りが続きます。『トップガン』を思い起こさせる“ビーチで訓練したらみんな仲間”的な愉快なシーンもあります。ただ、ポスターを見ればわかるとおり、そんな楽しい物語で終わってくれる作品ではありません。日本軍によるある兵器によって、彼らは“ゾンビ”と化してしまうのです。

 いわゆる多くの人がイメージするゾンビーー死んで言葉も話せず身体も欠損しているのに人を襲うやつーーならまだいいです。ゾンビになる、つまり人間でなくなった時点で、それは死んでいるのと同じだから。最強の不死身の軍隊のできあがりです。ゾンビになって誰かを襲っても罪悪感は生まれないし、ゾンビになった元人間を仕留める側もしょうがないという思いもあるでしょう。

 でも、『哭戦』は少年兵たちを普通のゾンビにさせてくれません。見た目は完全に死んでいる(予想以上にグロ描写ありで耐性ない人は要注意)のに、彼らは意識だけは残り、自分が“ゾンビ”になったこと(もう人間じゃないこと)を自覚できるのです。その上で突然の破壊衝動はあり、家族や恋人、仲間も無意識のうちに襲ってしまう可能性がある。襲った後に気づくという最悪のやつです。

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