水瀬いのりが語る、『阿波連さん』season2の役作り 「私とシンクロするんじゃないかな」

4月7日より放送のアニメ『阿波連さんははかれない season2』(以下、『阿波連さん』)。原作は、2017年〜2023年に『少年ジャンプ+』(集英社)で連載されていた、“他人との距離感をはかれない”阿波連さん(阿波連れいな)と隣の席のライドウくんとの関係を中心に描く青春ラブコメディだ。お互いの距離が近すぎたり遠すぎたり、まったく予想外の行動を取る阿波連さんに対して、ライドウくんがツッコミ役を担うかと思いきや、さらに奇想天外なボケを返していく先の読めない展開が話題を呼んだ。
2022年にはアニメ第1期が放送され、水瀬いのりが阿波連さんを演じた。“感情の起伏を小声で表現しなければならない”役作りには苦戦したというが、約3年の時を経て再び阿波連さんを演じるにあたり何を思うのか。心境に迫った。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「れいなちゃん」用の発声方法がプログラムされている

——3年ぶりの『阿波連さん』はいかがですか?
水瀬いのり(以下、水瀬):あっという間ですよね。私はオーディションのときにあまり自信を持てるタイプではなくて、「ご縁があればいいな」と思いながら行くんですが、『阿波連さん』に関してはオーディションを受けたときから「あれ、これもしかして決まる?」と思うくらい手応えがあったのを覚えています(笑)。シーズン2決定のお知らせを聞いたときは、時を経てまた自分の居場所に帰ってきたような気持ちで収録に臨もうと思いました。携わってくれている水あさと先生やスタッフの方々に、改めてお礼を言いたいなという気持ちです。
——3年も経つと、多少はご自身の変化があるかと思いますが、改めて阿波連さんという同じ役と向き合ってみていかがですか?
水瀬:れいなちゃんを演じるのはやっぱり難しくて、シーズン2になると、シーズン1にも増して感情の機微が表れていくんですが、かといって声量を増やしてはいけないという制約があります。なので、どんなときにも「声が届くか届かないか」の瀬戸際のところで感情表現をコントロールしていくのが難しかったです。ただ、シーズン1のときに音響監督さんたちからは本当に丁寧に、そして繊細なお芝居を追求していただいていたので、自分の中で「れいなちゃん」用の発声方法がプログラムされているような感じもあります。他のウィスパーなキャラや無口系のキャラとは違う、「れいなちゃんモード」に自分がカチッと合わせられればまたすぐに戻れ、シーズン2も走り切ることができたなと思います。

——過去に水瀬さんが、ラジオで自分の喉のことを「商売道具」とおっしゃっていたのを覚えているんですが、そのとき「プロとして自分の発声状態にすごく自覚的な人なんだな」と思ったのを思い出しました。
水瀬:たぶん私が音の聞こえ方にすごく神経質というか、自分の理想とする音の出方とか「こう聞こえてほしい」というゴールが決まっているから、どうしても「今届いてないな」と過敏に考えすぎる部分があって。コロナ禍の時期にでは、よく使っていた飛沫防止のパーテーションに当たって返ってくる自分の声で耳が痛くなることもありました。パーテーションに当たると自分の声が、丸く出したつもりでもが反射すると角が立った声として返ってくるみたいな感覚があって。当時はどの現場でもパーテーションで仕切られていたので、その環境で芝居するのがすごく難しかったです。シーズン1の頃はこのような環境もあり、思うような芝居にならないなと葛藤することもありました。シーズン2ではみんなで収録できるようになって、掛け合いできる楽しさが実感できるアフレコ現場でした。

——寺島さんとも久しぶりに掛け合いをしてみていかがでしたか?
水瀬:私にとって、てらしー先輩は事務所の先輩であるということがもちろん最初にあるんですが、私がデビュー前のオタク時代にてらしー先輩の声を聞いた作品では、年少の弟キャラとしてすごくいじられたりして、マイルドでかわいがられる人という印象を持っていました。でも実際に共演して、一緒にラジオやインタビューなどを受けたりするようになって、「こんなに気前のいいお兄さんなんだ」とか、「ツッコんでくれる存在なんだな」とか、初めて知った一面もありました。私からツッコんでもそれに対してちゃんと拾ってくれるというか、小さなボケも回収してくれて安心しておしゃべりできる、とても器用で頼れる先輩という印象を持ちました。
——“時々タメ口利いてもいい先輩”くらいの距離感ですね。
水瀬:そうですね。普通に「うんうん」とか相槌しちゃう瞬間もあって。でもそういう優しい雰囲気を言葉ではなく空気で出してくれる先輩だなって思います。

——シーズン2ではライドウくんと付き合い始めてからのエピソードが始まるわけですが、寺島さんやライドウくんに対する距離感は変わりましたか?
水瀬:れいなちゃんの気持ちは、私がなんとなくそう思う演技というのはもちろんあるのですが、れいなちゃん自身か水あさと先生にしかわからなくて、言葉にはできないと思うんです。その時々の感情は先生の書いた物語の中のれいなちゃんにしかわからないことなので、それをどれだけ私が汲み取って声にできるかだなと思います。シーズン2でも、恋が実った現状に対してれいなちゃん自身もまだドキドキしているところがすごくあるので、「好き」っていう気持ちを伝えたはいいけどまだ先が見えない感じが、れいなちゃんの恋愛の部分での不器用さとして描かれていきます。ライドウくんが好きな気持ちはあるんですが、好きすぎるがゆえに「彼の幸せとはなんだろう」と考えて、かえってぎこちなくなってしまったりするところは、演じていて胸が苦しくなりました。シーズン1では出したことのない感情の揺れがそのまま声にシンクロする部分が、シーズン1では見られなかったれいなちゃんとして登場するので、皆さんにとっても初めてのれいなちゃんになるかなと思います。

——「付き合った後の関係」や「実質くっついてる」くらいの距離感を描くラブコメは、近年増えてきたように思います。
水瀬:たしかに。どういう理由で最近の流行になっているのか、たまたまタイミングが重なっただけなのかわからないですが、私も恋愛もののドラマとかを観てはやっぱり「幸せは長く見ていたい」と思う派なので、ありがたさしかないなと思っています。先生が残してくれている、カップルになったライドウくんとれいなちゃんをアニメでも観れるなんて、本当にありがとうの気持ちでいっぱいです。結ばれた後の関係が原作で描かれたからこそ、いろいろな障害を乗り越えて絆を確かめ合った2人がいるわけですし、1つの結末をはっきり示してしまうのは結構勇気がいることなのかなと個人的には思ってしまうので、そこを描いてくれることの大切さを感じながらアフレコしていました。




















