フジテレビ、広告主離れと番組制作への影響は? 清水賢治社長の「企業風土改革」を占う
フジテレビジョンの女性アナウンサーに対する中居正広氏のハラスメント報道から始まった、フジテレビ(CX)やフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の経営問題について、弁護士らで構成する第三者委員会がまとめた調査報告書が3月31日公表された。中居氏による性暴力があったことを認め、性被害を申し出た女性アナウンサーより中居氏の利益を優先した会社側の対応を「経営の体をなしていない」と批判した。同日会見したFMHの清水賢治次期社長(現専務、フジテレビジョン社長)は報告を受けて女性アナウンサーに謝罪。2月に立ち上げた再生・改革プロジェクト本部を通してハラスメントが起こらない体制を作ることを確約した。一連の問題によって大幅に減った広告主が戻ってくるかは不透明で、制作費の減少が番組作りに及ぼす影響も当面は避けられそうにないが、旧来の体制が変わりフレキシブルでフレッシュな番組作りが行えるようになる可能性もありそうだ。
CXおよびFMH側に大きな非があったことを示す調査報告書だった。3月31日の発表には第三者委員会委員長の竹内朗弁護士・公認不正検査士らが登壇して調査報告書に沿って内容を説明した。結論として、女性アナウンサーが中居正広氏から「性暴力による被害を受けたものと認定」しており、そうした状況の発生にCX社員が関与しているかについても、直前に会社の業務として女性アナウンサーとCX社員が参加したことが、「本事案当日の食事の誘いをBBQの会と同種の会合と認識することに影響」を及ぼしたことを指摘。「本事案は、CXの『業務上の延長線上』における性暴力であったと認められる」と結論づけた。
その後の対応についても、女性アナウンサーからの相談について人権侵害の被害者救済にふさわしい対応がとられていなかったこと、CX社員が中居氏側の依頼を受けて女性アナウンサーに見舞金の名目で金銭を届けようとしたことは、「女性Aに対する口封じ、二次加害行為とも評価し得る」と指弾し、社員ではなく中居氏側の利益に立ったことも含めて「思慮の浅い意思決定と加害者により沿わない対応が、ステークホルダーからの信頼を失わせ、CXを危機的状況に至らしめた」と結んだ。
CXの社員たちが上司や取引先から受けたり、逆に行っていたりしたハラスメントに関する実態も報告があって、不適切な会合も確認されたことから、「今後、旧態依然とした不適切な会合が復活する事態が生じないよう、十分な意識改革と防止策が必要になる」と改革を促した。こうした企業風土が醸成されていった背景として指摘される。日枝久氏の長期にわたる経営関与についても触れていて、役員人事決定のプロセスの透明性や公正性を確保するよう求めた。
FMHでは3月27日に、日枝氏の退任を含むFMHとCXの役員体制変更を発表している。3月31日の会社側の会見には、6月の株主総会を経てFMH代表取締役社長となる清水賢治専務(CX代社長)が登壇。冒頭で性被害を認定された女性アナウンサーに謝罪し、調査報告書の中で様々なハラスメントの存在が確認されたことに対しても、今後の調査を経て厳正な処分を行うことを約束した。