『俺の話は長い』SPの“何も起きない”安心感 5年経っても生田斗真の“満らしさ”は変わらない

 生田斗真主演の『俺の話は長い』(日本テレビ系)が連続ドラマとして放送されたのは2019年の10月期。当時、劇中で主人公たち家族を象徴する食事である“すき焼き”がオリンピックになぞらえて語られていたことから「このドラマの続編が4年に1度やるという伏線だとしたら」とコラム(『俺の話は長い』生田斗真が流した涙の価値 無駄ではなかった“ニートとしての6年間”)に記したが、実際は5年と少々。2020年の東京オリンピックが1年延期になって、前のロンドンオリンピックから5年空いたことを考えると、ある意味で当たっていたのかもしれない。

 それはさておき、これだけ久々となればさすがに連ドラ時のあらすじを簡単におさらいしておく必要があるだろう。かつて起業したものの失敗に終わり、実家で無職のニートとして寄生生活を送っている31歳(当時)の満(生田斗真)。喫茶店を営む母・房枝(原田美恵子)と満が2人で暮らす岸辺家に、ある日、姉の綾子(小池栄子)の一家がマイホーム建て替え中の期間限定で同居することからこの物語は始まった。

 何かにつけては特技のヘリクツで周囲をまくし立てる満は、綾子とひたすら姉弟喧嘩を繰り広げながらも、時に悩みつつも我が道を進んでいく。そんな彼の姿に、綾子の夫・光司(安田顕)や娘の春海(清原果耶)は感化されていくわけで、最終的には満が議員秘書の仕事を得て脱ニートとなり、春海はラジオパーソナリティを目指すと決め、光司はタクシーの運転手になるなど、それぞれの進む道が示されたところで幕を下ろした。

 そして3月30日に放送された『俺の話は長い 〜2025・春〜』の前編。36歳になった満は再びニートに逆戻りしているのである。房枝はコロナ禍で打撃を受けたこともあり喫茶店を休業。5年前と同じように岸辺家の土地と建物を売りに出そうと考えている。そんななか、立派なタケノコを持って岸辺家にやってくる綾子と光司。喫茶店を継ごうと提案する綾子に、満は猛反対。挙句、満は家を売ることに賛成するのである。しかし、大学に進学して大阪で暮らしている春海が、それに反対するため東京に戻ってくるのだ。

 連ドラの時と同様、1エピソードのなかで前半・後半のふたつに分けられ、それぞれに異なるタイトルが付けられている、“30分ドラマ2本立て”のスタイルは今回も健在。前半の「タケノコとずん胴」では、その大部分が岸辺家の狭いキッチンのなかで満と房枝、光司と綾子の大人4人が喧々諤々している様が、実に10分近くにわたって展開する。まるで舞台劇のように、キッチンというひとつの空間に登場人物が出たり入ったりしながら、ひたすら彼らの会話を見せることで、このドラマが満のヘリクツを中心にした会話劇であることを思い出させてくれるのである。

関連記事