肝心の咲はどこにいるのか。病室を訪れた千堂に、淡路は自分が死なない限り咲の居場所はわからないと告げる。「1分でも1秒でも長く生きてやる。それが私の復讐だ」。淡路がやったことは取引ではない。そこに交渉の余地はなかった。淡路とさなえは文字通り自らの命をかけて誘拐事件を遂行し、第九は利用された。さなえは脳を見せることで捜査をミスリードし、千堂に政治的責任を突き付けた。余命わずかな淡路は、生きて脳を見せないことで千堂を拷問にかけた。

　すべてが犯人の思惑どおりに動いているときに、1人だけ予想外の動きをする男がいて、それは青木だった。「誰も行かないなら、俺が行ってあの少女を助けてきます」。真剣で誠実で、常軌を逸している青木。いち捜査員が、いくら航空機操縦免許を持っているからといって、外交案件のミッションをできるわけがないし、していいものではない。というか、常識のある人間は絶対にしない。でも青木にはそれをするだけの理由があった。

「閉じ込められているのは、どこの誰ともわからない人の命じゃない。誰かの雪子さんで、誰かの薪さんで、誰かの大切な娘なんです」

　全ての政治家とリーダーがこの心を持っていたら、とため息をつきそうになるが、薪が青木の無茶を認めたのは、それが薪にとって希望であり、自分がやらなければならないことと理解していたからだ。鈴木（中島裕翔）を死なせた後悔を胸に抱く薪は、青木を死なせないために指揮を執ることを決意する。

　青木のまっすぐな純粋さが未来を切り拓き、薪が過去を乗り越える構図がこれほどはっきりとあらわれているエピソードはない。映像で見たかったのはまさにこれだったと認識した。真のバディとなった薪と青木の活躍を楽しみに次週を待つことにしよう。

■放送情報
『秘密～THE TOP SECRET～』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00～22:54放送
出演：板垣李光人、中島裕翔、門脇麦、高橋努、鳴海唯、利重剛、眞島秀和、國村隼ほか
原作：清水玲子『秘密-トップ・シークレット-』『秘密 season0』（白泉社『メロディ』連載）
脚本：佐藤嗣麻子
演出：松本佳奈、宝来忠昭、根本和政、稲留武
プロデューサー：豊福陽子、近藤匡、近藤多聞
音楽：小島裕規“Yaffle”
主題歌：「Iris」BUDDiiS（SDR inc.）
制作協力：C＆Iエンタテインメント
制作著作：カンテレ
©︎カンテレ
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