『日本一の最低男』香取慎吾VS安田顕の最終章へ “家の外”を描くことで分かる一平の変化
3月6日に放送された第9話から、終盤戦となる“選挙編”へと突入した『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)。大江戸区役所の建て替え移転にともなって、大江戸商店街一帯で進められている再開発計画の存在を知った一平(香取慎吾)。そのエリアには、一平が正助(志尊淳)たちと暮らしている大森家の土地も含まれている。複雑な表情を見せる一平だったが、区長の長谷川(堺正章)から再開発に反対している一部の地権者の説得役を任されることになってしまう。
区議会選挙に出馬して当選することを目標に、“ホームドラマ”を演じながら家族や、街の人々のあらゆる問題と向き合ってきた一平。この物語において“街”というもの自体が重要な存在としてあり、かつその中心となる場所が古い商店街であり、おまけに政治が関わってくるとなれば尚更に、こうした再開発計画の話が持ち上がってくるというのは自然な流れといえよう。反対派の説得を任された一平は、真壁(安田顕)に対し「自分が納得できてからやりたい」と伝え、賛成側の集会に参加するのである。
この時点で、一平は家族の歴史や思い出が詰まった、そして何より正助たちと新たな思い出をいままさに作っていこうとしている大森家を手放すことになる再開発に“賛成したくない”立場であることは明白だ。それでも自分の意思や思い入れや望みに抗いながら揺れ動きながら、二階堂(岩松了)をはじめとした賛成派の人々のために動こうとする。その点は中盤で商店街の銭湯・高田湯に集まった反対派の人々に対して正助が言う「(一平は)自分が損をしても人のために走り回れる、最高の人なんです」という言葉の通りだ。
その高田湯を切り盛りする反対派のあき子(市毛良枝)の説得を行いながら、高田湯が街の人たちにとって憩いの場として機能していることを目の当たりにする一平。彼は終始、あき子に対して再開発に同意するよう求めるのだが、一平の表情からは、この場所をなんとしても残したいという正反対の思いがひしひしと強くなっていることが窺える。これまでのエピソードでは、大森家の家族の問題など“家のなか”で起こることと、街の人々との関係など“家の外”で起こることは棲み分けられているように見えていたが、どうやら違っていたのか、あるいは違ってきたのか。