『御上先生』吉柳咲良のあふれる感情が胸を打つ ヤングケアラーと生理の貧困が映す現実
『御上先生』(TBS系)第7話では、この社会を覆う現実に斬り込んだ(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。
通報を受けて御上(松坂桃李)がドラッグストアへ駆けつけると椎葉(吉柳咲良)がいた。生理用品を万引きした椎葉は両親を事故で亡くしており、認知症の祖父の介護に加えてPMS(月経前症候群)の重い症状を抱えていた。椎葉は退学が決まる。万引きに加えて、校則で禁じられている出会い系のアルバイトをしたことが理由とされた。「少し話をさせください」と言って、椎葉はクラスメイトに向かって話し始めた。
なぜ椎葉は生理用品を盗んだのか? 他の必需品や高価な製品ではなく。椎葉の祖父の和菓子屋では赤飯を炊く。椎葉は「生理って女の子にとって良いものなんだ。大切なものなんだ」と信じて育った。しかし家業が傾き、全てが椎葉にのしかかる。考えようとするほど、ヤングケアラーの椎葉は追い詰められた。それでも周期は来る。生きていることを知らせるように。
御上が黒板に書いた「7/7」の数字。G7参加国中の日本の順位で、国内総生産ではなく相対的貧困率である。高所得層の隣徳学院の生徒にはほとんど当てはまらない。けれども、誰もが何かのきっかけでなりうるものでもある。「私はここで血を流してるのに、誰も気付いてくれない」は椎葉の心の叫びで、身体の変調は助けを求めるサインだった。
自発的に署名活動をする3年2組の生徒たちが頼もしい。貧困の実態を啓発しながら、学業継続のために支援制度を設けることを提案する。「Personal is political」の実践であり、御上にとっては兄の宏太(新原泰佑)がそうしたように、目の前で困っている人のために声を上げることを意味する。進学校を舞台に、格差社会の実状を「生理の貧困」を通して映し出した。是枝(吉岡里帆)の抗議に見られるセンシティブな領域への配慮もあった。
学校側のリアクションは良くも悪くも大人の都合だった。退学は当然と言わんばかりだった古代(北村一輝)は、手のひら返しで生徒たちを創立の精神にかなうと称賛する。生徒の善行が自分の手柄であるかのような口ぶりだった。