池松壮亮の『ホットスポット』での役割を分析 コメディ要素を際立たせる存在に
ピンと張り詰めた独特な空気感にシュールな笑いが加わる面白さ。これぞバカリズム脚本といったところだ。そう、市川実日子主演のドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系)はそんな作品なのである。主人公・遠藤清美(市川実日子)を中心とした日常と非日常の連続。第5話で『月曜から夜ふかし』のディレクター・岸本(池松壮亮)が取材で山梨を訪れたことで物語が大きく動いた。
清美、日比野美波(平岩紙)、中村葉月(鈴木杏)、そして「レイクホテル浅ノ湖」でフロント業務を担当している宇宙人の高橋孝介(角田晃広)との会話劇など見どころはたくさんあるが、第1話から細かな伏線がちりばめられていた。伏線というよりも、伏線と捉えられるような仕掛けといったほうがいいかもしれない。いたって普通の日常のなかに宇宙人という異物が存在するだけで、この物語はすべてが疑わしく思えてくる。
そんな本作において、物語の展開の鍵を握っているのが岸本である。岸本は、日テレのバラエティー番組『月曜から夜ふかし』のディレクターで、富士山の麓で地元の人たちに聞き込みを行っている。聞き込み調査を行っていると、ある男性から高速移動をする人物の目撃情報を耳にする。そこから事態は急展開を迎え、これまでの平和な日常コメディが“ホラー”展開へ。淡々と聞き込みを行っていく岸本だが、彼の演技は妙に違和感を覚える。あまりにも普通すぎるのだ。あえて淡々と演じることで、視聴者に違和感を抱かせているのだろう。
池松は、そんなコメディのなかで異物でありながら、違和感なく溶け込んでいる。それはインタビュイーを立てつつも、しっかりと自らの意見を主張するインタビュアーのよう。池松という存在が作中のなかでどういう存在なのか、そのバランス感覚を大事にしながらも、あくまでもコメディ作品であるという体裁を保っている。そのスタンスは池松の存在感を大きいものにしている。