寺田心の真っ直ぐな姿勢は松平定信にピッタリ! 『らんまん』からの成長刻む『べらぼう』
後に松平定信となる田安賢丸。松平定信といえば、商業を重視した田沼意次(『べらぼう』では渡辺謙が演じている)の政治を否定し、幕政の立て直しに尽力。厳格な統制をとった人物として有名だ。第2回、第3回で寺田が見せた演技からは、真面目さや実直さ、「武士はこうあるべき」という固い意志がうかがえ、田沼意次と相反することになる松平定信の片鱗が感じ取れる。
賢丸を演じている寺田の台詞回しはややかたく感じられるが、あのかたさもはっきりとした言葉遣いも、真面目一辺倒な賢丸の人物像を印象づける、寺田の演技姿勢の表れなのかもしれない。
加えて、第3回では目の演技が心に残った。一度白紙となったはずの白河松平家の養子に賢丸が送り込まれることになる。その背景には田沼意次の存在があるが、賢丸の兄・治察(入江甚儀)はそれを知らない。賢丸も、治察・賢丸の「母」である宝蓮院(花總まり)も養子縁組を危惧するが、治察は「まさかの折はそなたを呼び戻してよいとのお言葉を、上様から直々に頂いてまいった」と伝える。
「上様から直々に?」
「その上でどうする? 賢丸よ」
言葉をのみ、視線を下げて考え込む表情には、将軍・家治(眞島秀和)の言葉を無碍にするわけにはいかないという心情が表れていた。武士の精神を大事にする賢丸の強みでもあり、弱みでもある部分が感じられる場面となった。
第4回の予告では、賢丸は「今に見ておれ、田沼……!」と憤りをあらわにする。予告編で映し出されたのは一瞬だが、その顔つきにも声色にも強い感情が込められており、第2回、第3回で見せた演技とは異なるものに感じられた。ここから徐々に賢丸の田沼への敵対心が強まっていくのかもしれない。
寺田はNHK大河ドラマ・ガイド『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~前編』(NHK出版)の中で「すばらしい俳優さんに囲まれた現場なので、いろいろと学びつつ、自分にしかできない芝居を見つけていけたらと思っています」とコメントしている。賢丸の行く末に心が惹きつけられると同時に、回を通じて変化していくであろう寺田の演技に期待が高まる。
■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK