『おむすび』は一人ひとりの再生をじっくり描く 緒形直人の震える背中に宿る深い悲しみ

『おむすび』はそれぞれの再生をじっくり描く

 『おむすび』(NHK総合)第49話では、結(橋本環奈)がおむすびへの思いを語った。

 美佐江(キムラ緑子)に孝雄(緒形直人)との仲直りを提案した結は、美佐江の兄夫婦が震災で亡くなったことを知る。美佐江は「あの人だけやないんよ。家族うしのたん」と言って大きく息を吐いた。

 炊き出しの味が不安定になりやすい理由は、避難所生活で疲労の蓄積による味覚の変化や、野菜から出る水分で味が薄まるためだった。沙智(山本舞香)や佳純(平祐奈)、森川(小手伸也)が、元気のない結を気づかい率先して下調べをしたのだった。

 仲間に助けられて、防災訓練の炊き出しに結が考えた献立は、わかめおむすびとサバ缶とツナ缶を使ったけんちん汁。どうしてほかほかのおむすびにこだわるのかと聞かれ、結は避難所での出来事を話し始める。これは第21話で描かれたエピソードである。地震発生直後、差し入れを届けに来た雅美(安藤千代子)に、幼い結(磯村アメリ)が、おむすびが冷たいと言うシーンがあった。

 「なんであんなひどいこと言ったっちゃろう」「その人の顔が忘れられん」とつぶやく結。涙ぐんで詫びる雅美の姿は、結の心にずっと残っていた。地震で困っている人に温かいものを食べてほしい、という真心の結晶があのおむすびだった。思いと裏腹に予定よりずっと時間がかかり、おむすびは冷めてしまった。どんなに雅美は残念だっただろうか。

 幼い結に悪意のない言葉を投げられて、雅美は傷ついたかもしれないけれど、それ以上に申し訳なく思ったのだと思う。結が雅美のことを覚えていたのは、雅美の思いを受け止められなかった後悔と同時に、相手に寄り添えなかった雅美のつらさがわかるようになったこともあるだろう。ほかほかのおむすびは、雅美の気持ちに応えることも意味しているのではないだろうか。

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