こんなに“怖いガンダム”はない! Netflix『復讐のレクイエム』はファンが観たい一作に

 本作のプロジェクトを引っ張っていたのは、脚本を担当したギャビン・ハイナイト。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を字幕なしで観たのがガンダム初体験で、フェイバリットには『第08MS小隊』を挙げるオタクだ。彼のフィルモグラフィを見れば、『Tekken:Bloodline』、『スター・ウォーズ レジスタンス』、『トランスフォーマー サイバーバース』など、名だたるフランチャイズのシリーズ作品が並ぶ。そのフランチャイズの魅力を把握し、展開するのに長けた人物なのだろう。48歳という年齢にも親近感が湧く。

 一年戦争を舞台にしてミリタリー色を濃くするのは、『ガンダム』シリーズの成功法則である。『第08MS小隊』を筆頭に、ブロスダウ監督がフェイバリットに挙げる『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』、正しくは宇宙世紀ではないがハイナイトが本作に影響を与えたと語る『機動戦士ガンダム サンダーボルト』などは、いずれもそうだ。3DCG作品『機動戦士 MS IGLOO』の特に第1期は、一年戦争の片隅で起こっていた出来事をジオンの目線で描くという意味で『復讐のレクイエム』に非常に近い作品である(刻々と変わる戦争の局面や味わい深い人間ドラマが描かれている点も出色だった)。シミュレーションゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』や『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』でも本作と似た世界観が味わえる。これらの作品は、いずれも富野由悠季監督の手によるものではないものの、『ガンダム』シリーズのファンにこよなく愛されているところが共通している。

 コミックでは、1980年代に発表された『MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝』が主人公はジオンの少年兵士であり、ジオン側から見たガンダムの脅威を描いている点でまさに本作と近い。近年も『機動戦士ガンダム フラナガン・ブーン戦記』は、一年戦争が舞台でミリタリー色が強く、ジオン側の目線でガンダムの脅威を描いている。

 こうした『ガンダム』シリーズの鉄板ともいえる成功法則は、脚本のハイナイト、ブロスダウ監督をはじめ、プロデュース側のバンダイナムコフィルムワークスにも共有されており、『復讐のレクイエム』にも十分に生かされていた。だから、ストレスがほとんどない、『ガンダム』シリーズのファンが観たいものを観ることができる作品になったのだろう。本作に続編があるのかは不明だが、再び一年戦争の新たな局面をリアルに描く作品が登場しても不思議ではないし、むしろ大いに期待したい。そのときは隠し味にドロッとした人間ドラマを入れてコクを出してもらえると、筆者としては非常に嬉しい。

■配信情報
『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』
Netflixにて世界独占配信中
企画:バンダイナムコフィルムワークス
制作:サンライズ
共同制作:SAFEHOUSE
監督:エラスマス・ブロスダウ
エグゼクティブプロデューサー:浅沼誠、小形尚弘、櫻井大樹、ギャビン・ハイナイト
アニメーションプロデューサー/音響監督:由良浩明
プロデューサー:彌富健一
脚本:ギャビン・ハイナイト
キャラクターデザイン:マヌエル・アウグスト・ディシンジャー・モウラ
メカニカルデザイン:山根公利
ディレクター・オブ・フォトグラフィ:笠岡淳平
音楽:ウィルバート・ロジェ II
製作:バンダイナムコフィルムワークス
キャスト:シリア・マッシンガム
©創通・サンライズ ©SOTSU・SUNRISE 
公式サイト:https://gundam-requiem.net

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