TVアニメ『アオのハコ』の映像美 光の演出が描き出す“恋をしている人の視点”

 現在放送中の秋アニメ『アオのハコ』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている三浦糀が手がける大人気漫画が原作。中高一貫のスポーツ強豪校・栄明学園を舞台に、バドミントン部に所属する猪股大喜と1個上の女子バスケットボール部に所属する鹿野千夏の恋愛模様を描いた青春ラブストーリーだ。

 原作は「2021年次にくるマンガ大賞(コミックス部門)」では8位にランクインし、長らく注目を集めていた。そのためアニメに対するハードルはかなり高まっていたが、そのハードルを軽々と超えるクオリティで仕上がっていた。作者の三浦も自身のX(旧Twitter)に10月上旬、「漫画描いてきて良かったねぇ、、、」と投稿しており、映像化されたことに感無量といった様子だ(※)。

『アオのハコ』ノンクレジットオープニング│Official髭男dism「Same Blue」│ Blue Box Opening

 映像化にあたっては原作の良さを十分に汲み取ることに注力されており、登場人物の心情がより立体的に感じられる仕上がりに。特に、恋する10代特有の感覚を呼び起こさせる“光”の演出がとにかく巧みなのだ。

 作中では、千夏が光に照らされる瞬間が多い。これはまさに“恋をしている人から見えている世界”だ。オープニング映像でも、冒頭の二度まばたきしてから走り出す千夏の横顔や、ラストの両手で頬杖をつきながら髪をなびかせる真正面を向く千夏の顔は、いずれも眩い。どこにいても千夏にはスポットライトが当たったかのように見えてしまう。そんな恋する大喜から見た世界が、光の演出によって映し出されているのだ。

 それは第3話で鍵を忘れた千夏を家の前で待ちぼうけさせないために、大喜が全速力で帰宅するシーンでも顕著だ。何とか千夏よりも家に早く着くが、その後すぐに帰宅した千夏から「さっき走って帰ってきた? 汗かいてたからそうかなって思って」「それって私が先に帰ってて、外で待ってたりしないようにかなって」「だとしたらナイスカバーリングだね」と言われる。自分の気持ちをわかってくれたことに大喜の感情は高ぶり、またしても千夏に光が当たる。ただ、今回は家の玄関という比較的明るい場所。しかも時間帯は夜。舞台設定でいえば光が差し込むことなどありえないが、やはり大喜の目には千夏が眩しく映っていた。

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