ごっこ倶楽部 志村優&早坂架威とTikTok Japan担当者が語る、ショートドラマの未来と可能性

プラットフォームとコンテンツのあり方

――実際、それだけいろいろと考えて作るには、時間もかかると思うんですが、ごっこ倶楽部は年間何百本も投稿されていますよね。クオリティとスケジュールのバランスをどう整えているんですか?

早坂:頭を使っているかどうかはやっぱり映像に反映されます。掴みの2秒で人の手をどう止めさせるのかとか、衣装の色を補色関係にするとか、ビジュアルデザインも考える必要があるし、脚本の構成も同様です。でも、時間をかければいいものになるとは限らない部分もあって、偶然何かが起こるように種を仕掛けておくことも大事ですね。

ごっこ倶楽部 早坂架威

志村:絶対的に量は重要です。何が上手くいったかを分析するPDCAを早く回せないと、面白いものは作れないです。何より流行のサイクルが早いので、先週流行っていたものが今週はもう廃れている、なんてよくあることですから。実際、「面白いもの」って定量評価なので、何が面白いのかは一個の作品だけでは紐解けない。10個でも足りないし、100個比較してやっと1つわかってくるような感じなので、僕らが作り方を洗練させていく上で、量と速度は非常に重要な要素になっています。

――TikTokのようにレコメンドシステムでコンテンツが流通する時代に、クリエイターが活躍するために必要なことは何でしょうか?

佐藤:一番大事なのは、そのレコメンドのシステムを気にしすぎて合わせるよりも、本質的にエンターテインメントを届けることだと思います。専門性や工夫を凝らしたコンテンツの影響力が高まっていることからも、やっぱりユーザーに楽しんでもらえるコンテンツを、数字に一喜一憂しすぎずに継続して作っていくことですね。分析ツールも多数提供していますが、「TikTok Creator Summit Japan 2024」でも紹介したように、収益面やコンテンツ制作のためのツールも今後さらに強化していきたいと思っています。

TikTok Japan 佐藤友浩

志村:ショートドラマを作る時、最初の数秒にめちゃくちゃ命をかけて作るんです。それは、今の指標だとそういう組み立て方にどうしてもなってしまうから。でも、最後が面白い動画もいっぱいあるはずで、今後より良いクリエイターを創出するために、前半に全てをかけるもの以外も評価できる分析ツールや指標があると良いなと思います。

早坂:役者の立場で言うと、作品を通して役を演じるわけですから、本当に役者が一番観てほしい部分が後半になることも多いんです。そのために最後まで観てもらう工夫をするわけですけど。

佐藤:映画やテレビも、フォーマットによって作品のあり方が決まってきました。多分、次の新たなコンテンツは最初の数秒に大きく影響されないフォーマットが発明された時に生まれてくるんじゃないかと思います。TikTokでも短尺動画に加えて、TikTok Studioを使えば60分の長尺動画も編集できます。また、横型の視聴体験についてもさらに強化していきたいと考えています。

――例えば、TikTokも提供しているサブスクリプションで流す動画なら、「最初の2秒勝負」ということにはならないですよね。

志村:サブスクになると今度は続きを観たくなるかが重要なので、最後のクリフハンガーを考えないといけないです。僕らもぺイパービュー方式のプラットフォームで配信する作品は、読後感に注力するようにしています。

ごっこ倶楽部の考える“ハイクオリティなコンテンツ”とは

(左から)ごっこ倶楽部の志村優と早坂架威、TikTok Japanの佐藤友浩

――ショート動画の話って、どうしても仕組みや仕掛けの話になることが多いですけど、作品である以上、想いがこもってないとハイクオリティなものにはならないと思いますが、どう考えますか?

志村:バズる動画が仕組みから生まれるケースが多いことも事実ですけど、それは絶対にその通りで、愛がないと面白くなりません。やっぱり何かを作りたいとか、この物語をこの役者さんで観たいとか、そういう気持ちが真ん中にある作品は作っていて本当に楽しいんです。一方で、そういうのがないと、1億再生されても自分の代表作だって胸を張って言えません。「これを作りたい」という愛があるから3年間、こんな生活が続いているんだと思いますし。一方で僕らが作品を作り続けていられるのは、毎日バズっているからでもあります。

――ごっこ倶楽部が今後目指す、“ハイクオリティなコンテンツ”とはどんなものですか?

志村:次世代エンターテインメントとしてショートドラマを作る上で至上命題なのは、偶然の出会いの中でどれだけ面白いと思ってもらえるのか、感動する気じゃなかった人を感動させる、笑いたい気分じゃなかった人を笑わせることができるかどうかです。偶然の出会いで鑑賞後にどんな読後感になるのかが勝負で、それは映画やテレビのように自分で選ぶメディアから感じたことのないものだと僕は思うんです。

早坂:役者目線では、やっぱりきちんと芝居できるショートドラマを作り続けたいですね。完全視聴とか最初の2秒とかいろいろなことを考えないといけないけど、やっぱりドラマは芝居を突き詰めるのが一番大事ですし、クオリティを上げるって、結局そこだと思います。あと、せっかく縦型で成功しているので、長編でも観てもらえるような作品を、今までにない規模感で作れるようになりたいです。

志村:ジャンルでいうと、SFをやりたいですね。クリストファー・ノーランがやるような壮大な作品が縦型で出てきたら、一段階上に行ける気がします。さっき言ったような、縦の画角で奥行きを上手く使ったSFがあると面白いかもしれない。そういうものを作ってみたいですね。

佐藤:TikTokは世界150の国と地域で展開するグローバルなプラットフォームなので、TikTokに投稿した時点でグローバルな市場にコンテンツが放たれます。そのため、日本から世界に通用するクリエイターがさらに出てきてほしいなと思っています。今志村さんがおっしゃったようなレベルのクリエイターが出てくれば、それに憧れた人がまたTikTokで新たな動画を生み出す。そういう循環を作れるとすごく嬉しいです。是非、次世代のクリストファー・ノーランを目指していただきたいです。

(左から)ごっこ倶楽部の志村優と早坂架威、TikTok Japanの佐藤友浩

参照
※ 日経BP 総合研究所調べ

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