『ライオンの隠れ家』坂東龍汰の特筆すべき表現力 “正解”を用意しない物語の始まり

 これまでもASDを描いた作品は国内外の映画やドラマに数多くあり、言い方は適切ではないかもしれないが作品の題材のひとつとしては極めてポピュラーなものともいえる。近年では診断基準の変更によってASDと診断される子どもの数は増加傾向にあるといわれており、また一方で、よりひとりひとりの特性に合わせた療育が進められるなど、取り巻く環境は以前と比べて大きく変わってきているようだ。美路人の場合も少なからず困難があっても、職業を得て、平穏に兄との生活を送ることができていると窺うことができよう。そうした現代におけるASDのリアルを描くこと、これがこのドラマの成否を占う重要な一要素となることは間違いない。

 同時に、被虐待児童であると推察できるライオンの過去。それに気が付いた洸人は、ライオンが愛生の子供であるかもしれないと考えるのだが、それはつまり、何年も音信不通になっていたとはいえ身内が加害者であるということを意味している。

 そしてこの小森家の物語と同時並行するように描かれる、山梨県での一連。妻と子の捜索願を出した橘(向井理)という男性と、捜査に当たる刑事の高田(柿澤勇人)。高田に近付く雑誌記者の工藤(桜井ユキ)。まだバラバラの状態のいくつもの視点・いくつもの物語がひとつの方向へとまとまっていくことで、このドラマは確かなかたちを得ることになるのだろう。

■放送情報
金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:柳楽優弥、坂東龍汰、齋藤飛鳥、佐藤大空(子役)、柿澤勇人 、入山法子、岡崎体育、尾崎匠海(INI)、平井まさあき(男性ブランコ)、森優作、桜井ユキ、岡山天音、でんでん、向井理、尾野真千子
脚本:徳尾浩司、一戸慶乃
主題歌:Vaundy「風神」(SDR/Sony Music Labels Inc.)
演出:坪井敏雄ほか
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:佐藤敦司
編成:吉藤芽衣、中野翔貴
製作:TBSスパークル
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lionnokakurega_tbs/
公式X(Twitter):@kakurega_tbs
公式Instagram:lionnokakurega_tbs

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