アクション映画として世界レベル 『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の突出した完成度

 このようにアクションとユーモアというシリーズを支える魅力に磨きをかけつつ、一方で本作は新しい領域にも入っている。それは映画全体が、モラトリアムの終わりを予感させる内容になっていることだ。『ベビわる』は殺し屋映画だが、同時にモラトリアム映画でもあった。社会で上手くやっていけない若者2人が、あれこれ将来に悩みつつ、とりあえず目の前の生活を何とかしながら生きていく話だ。そして、あくまで2人のバディ映画であった。一方で今回は、前田敦子と大谷主水が演じる先輩・上司が登場し、組織の一員としてのチームプレイを要求される。「先輩や上司とうまくやれるか?」という、これまでにない課題がドラマの中に組み込まれたことで、これまでの大学生の夏休み的な空気から、新卒1年目の空気を作中にもたらした。それはモラトリアムの終わりと、その先に待つ未来を想像させる。物語の結末はシビアな現実を予感させるが、同時にやさしい空気も残す。この感覚もシリーズ初だろう。

 アクション映画として、コメディ映画として、そしてモラトリアム映画として、『ベビわる』シリーズは進化を続けている。日本映画の娯楽活劇の最先端を、是非とも劇場で目撃してほしい。度肝を抜かれ、笑って、ちょっとだけしんみりする。楽しい時間が過ごせるはずだ。

■公開情報
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
全国公開中
出演:髙石あかり、伊澤彩織、水石亜飛夢、中井友望、飛永翼(ラバーガール)、大谷主水、 かいばしら、カルマ、Mr.バニー、前田敦子、池松壮亮
監督・脚本:阪元裕吾
音楽:SUPA LOVE
アクション監督:園村健介
主題歌:女王蜂「狂詩曲」(Sony Music Labels Inc.)
挿入歌:忘れらんねえよ with ちさと&まひろ(from ベイビーわるきゅーれ)「そっか、自由か。」(Bandwagon/UNIVERSAL MUSIC)
配給:渋谷プロダクション
©2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
公式サイト:https://babywalkure.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/babywalkure2021
公式Instagram:@babywalkure
公式TikTok:@babywalkure.official

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