武道家がアニメ『ザ・ファブル』の戦闘シーンを解説! 原作愛に溢れた声優陣の名演も必聴

武道家がアニメ『ザ・ファブル』を解説!

 今作を見逃していた方は、配信などで後追いすることもできる。だが、ここはやはりBlu-rayで観ていただきたい。Blu-rayでしか観ることのできないご褒美があるからだ。オーディオコメンタリーである。

 特に主人公・明役の興津和幸と真黒組若頭・海老原役の大塚明夫による掛け合いを聴くだけでも、十二分に元が取れる。東京出身の大塚明夫の、フリートークにおける関西弁のナチュラルさに感嘆する。海老原を演じるに当たり、相当関西弁を特訓したことが伺える。やはり超一流のプロだ。興津和幸も関西出身のため、完全に大阪のおっちゃん同士の飲み屋での会話と化している。関西弁の中に時折標準語が混じるさまも、「若い頃はヤンチャだったが、年を食って少しだけインテリっぽくなった大阪のおっちゃん」という雰囲気があり、とても良い(※このニュアンスが関西人以外の方に伝わるかは、やや不安である。イメージとしては前田日明なのだが、なおさら伝わらないかもしれない)。

 また、大塚明夫自身が述べる、今作の見どころ2点にも触れなければならない。まずは、原作ファンにはお馴染みの、語尾の「──」(罫線)についてである。あえて「……」(三点リーダー)ではなく「──」を使うところに、深い意味を感じてしまう。セリフにした時に、この「──」をどう表現するか。この部分に、声優の技量や感性が問われる。

 余韻を残した方がいいのか。語尾を伸ばし気味にすべきなのか。あえて言い切った方がいいのか。先に原作を読んでいる方の場合、百人百様の「──」の解釈があると思われる。各声優陣の演技を聴き、「そうそう! そのニュアンス!」「惜しい! そこはそうじゃない!」「なるほど! そう来たか!」と、「──」の解釈について一喜一憂するのも醍醐味である。

 そしてもう1点は、声優陣についてである。もちろん、大塚明夫も、興津和幸も、沢城みゆき(洋子役)も、みな素晴らしくキャラにハマっている。中でも特筆すべきは、海老原の弟分でありながら、最凶のヤクザ・小島を演じた津田健次郎である。彼の美声については、今さら説明するまでもないだろう。彼の魅力が最大限に発揮されるのは、悪役を演じた時だ。『ゴールデンカムイ』における尾形役もそうだが、冷たい爬虫類的な悪役を演じる際の、あの色気はもう、なんたることだ。あの声で、耳元で何かしら囁かれながら撃ち殺されたい。そんな願望さえ生じてしまう。聴く人間を、地獄に引きずり込む声だ。

 最後に、監督を務める髙橋良輔に改めて敬意を表したい。かつて岡田准一が、これ以上ない説得力を持って佐藤明を具現化してしまった。「ファブル=岡田准一」のイメージが強い中、相当なプレッシャーがあったと思われる。

 だが、TVアニメ版『ザ・ファブル』の監督を務めるのは、あの『装甲騎兵ボトムズ』の髙橋良輔。その第一報を聞いた時のワクワクを、今でも思い出す。『ボトムズ』のオープニングテーマ「炎のさだめ」の世界観が、ファブルにピッタリだからだ。

〈地獄を見れば 心がかわく〉
〈たたかいは あきたのさ〉
〈さだめとあれば 心をきめる〉
〈そっとしておいてくれ〉
〈明日にああつながる 今日ぐらい〉

 今作においても、殺しを禁じられた明が、「昨日と同じ今日がきて── 今日と同じ明日をむかえる。平和っていいなオイ」と呟くシーンがある。「感情のない殺人マシーン」だった明が、「心のある人間」に変化していく過程こそ、今作の大きなテーマである。明の成長物語でもあるのだ。

 叶うならば、第2クールが終わった後も、明の成長物語を、まだまだ追い続けたい。御年81歳になる髙橋監督にも、まだまだ頑張ってもらわねばならない。近ごろは、髙橋監督の健康ばかり願っている。

■リリース情報
『ザ・ファブル』
9月25日(水)よりBlu-ray Vol.1~Vol.4発売
価格:10,780円(税込)

【パッケージ仕様】
・アニメ描き下ろし三方背ボックス
・トールケース+化粧紙

【特典】※各巻共通
・32ページブックレット
・キャストオーディオコメンタリー
《Vol.1》第1話 出演:興津和幸、沢城みゆき
第4話 出演:興津和幸、大塚明夫
※商品内容は予告なく変更になる場合あり

【店舗共通全巻購入特典】
原作者・南勝久描き下ろし 複製サイン色紙

出演:興津和幸、沢城みゆき、花澤香菜、大塚明夫、津田健次郎、小村哲生、福島潤、石井康嗣、岩崎諒太、三野雄大、髙橋耕次郎、水内清光、大西健晴、朝比奈拓見、一条和矢、梶裕貴、藤真秀、安済知佳、子安武人、金光祥浩
原作:南勝久『ザ・ファブル』(講談社「ヤングマガジン」掲載)
監督:髙橋良輔
シリーズ構成:高島雄哉
脚本:高島雄哉、森田眞由美
キャラクターデザイン:大下久馬、長谷川早紀、中村路之将
音響監督:浦上靖之
音楽:福廣秀一朗
音響制作:オーディオ・プランニングユー
第1クール オープニングテーマ:ALI「Professionalism feat. 般若」
第1クール エンディングテーマ:梅田サイファー「Odd Numbers」
第2クール オープニングテーマ:梅田サイファー「スイッチ」
第2クール エンディングテーマ:ALI「BEYOND feat. MaRI」
アニメーション制作:手塚プロダクション
製作:アニメ「ザ・ファブル」製作委員会
発売元:アニメ「ザ・ファブル」製作委員会
販売元:VAP
©︎南勝久・講談社/アニメ「ザ・ファブル」製作委員会

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる