『虎に翼』の癒やしを担う“ナイスコンビ”たち 寅子&よね、小橋&稲垣らの軽妙な掛け合い
一方、小橋と稲垣は、法学部時代からつるみ、女子部出身者を見下していたが、寅子と同じく裁判官になり、最高裁家庭局の一員として、家庭裁判所設立準備室で寅子と一緒に仕事をする頃には、稲垣はすっかり感じのいい大人の男性へと成長していた。ところが、小橋は相変わらず減らず口ばかりで、寅子にも嫌な態度を取ることが多い。その後、稲垣は東京家庭裁判所の少年部部長に出世。そんな稲垣と比較して、小橋は後輩の秋山(渡邉美穂)に、「家裁平判事の俺にまでおべっかを使わなくていいから」などと自虐的な皮肉を言い、寅子を呆れさせる。元同級生は、出世をめぐるライバルではあるが、何だかんだ言いながらも、小橋と稲垣は良いコンビで、友情が続いているように見える。
ちょっとお笑いコンビのようなのは、寅子の甥で、花江(森田望智)の2人の息子・直人(青山凌大)と直治(今井悠貴)だ。直人は少年の頃から利発でしっかり者で、母親想いの良い息子だったが、大学生になってからも法律の勉強に励む真面目な長男。対照的に、次男の直治はジャズに夢中になり、大学に進学しないと言って、花江を心配させる。
中古で購入したサックスを四六時中練習し、家族が揃っている時に、空気を読まずに吹きたがる直治に、直人は「ダメだ、あと少しだけ耐えるんだ」と言って我慢させたり、直明(三山凌輝)の結婚式の計画を家族で話している際には、直治が「俺の演奏タイムも作ってくれよな?」と言い出すと、「お前が楽しむんじゃなくて、直明兄ちゃんのことを考えろ」とたしなめる直人。すると、直治は「俺の演奏で俺は楽しい。みんなも楽しい。だからよくない?」などと返していた。直人と直治の兄弟は、『虎に翼』でお笑いパートを担っているような“ナイスコンビ”ではないだろうか。
今週、本格的に描かれている「原爆裁判」は、『虎に翼』において大事なテーマの1つだが、非常に重い内容だ。そういった重要なことを取り上げつつ、心が通い合う友人同士の絆に感動させたり、“ナイスコンビ”で笑いを誘ったりして、緩急をつけることで、『虎に翼』は魅力的で愛されるドラマとなっているのだろう。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜~金曜8:00~8:15、(再放送)毎週月曜~金曜12:45~13:00
BSプレミアム:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜8:15~9:30
BS4K:毎週月曜~金曜7:30~7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、三山凌輝、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、井上祐貴、尾碕真花、名村辰、松川尚瑠輝、渡邉美穂、菊池和澄、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK