『虎に翼』“婚姻制度”に鋭く切り込む週明けに 寅子が同性婚&夫婦別姓に感じた「はて?」

 そしてその法律は今なお、変わらない。同性婚を認めるか否かの議題で挙がるのが、自然生殖の可能性だ。自然生殖の可能性がない以上、国家が法的婚姻制度でもって同性カップルを法的に保護する必要はないと主張する人もいるが、寅子と航一がそうであるように、互いの合意をもって子供は作らないと決めている異性同士のカップルも存在する。婚姻の目的は、航一が寅子にいくつか提示したように、生殖に限らず多種多様だ。中でも、民法763条で「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と定められているように、婚姻制度自体が永遠の愛を誓うわけではなく、むしろ永遠を誓わない愛であるとする航一の主張は新たな視点だった。

 婚姻について選べることがある一方で、選べないこともある。苗字の問題だ。よねのアドバイス通り、航一と話し合っていくらかスッキリした寅子だったが、花江(森田望智)に「結婚となれば、星家に住んで、星家の人になる」と言われたことで再び「はて?」が頭を支配する。花江の言葉には、寅子が航一の籍に入り、星寅子になることが前提にあった。だが、民法第750条には「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定められており、必ずしも妻が夫の苗字になる必要はない。玲美(菊池和澄)のように早く猪爪を名乗りたいという人もいれば、夫の苗字に変わることに対して抵抗を持つ人も当然いる。

 寅子がもしそうなのであれば、選択肢があるのだから、婿に入ってほしいと航一に頼めばいいと思うかもしれない。しかし、そうではなく、寅子は夫婦のどちらか一方が苗字を変えなければならないこと自体に疑問を持つのだった。

 同性婚も夫婦別姓も未だ議論の最中にある。おそらく現代人だけではなく、寅子が生きる時代にも「なぜ同性カップルは結婚できないのか」「どうして結婚したら夫婦で苗字を統一しなければならないのか」といった疑問を持っていた人たちは存在していただろう。本作はそういう人たちを透明化せず、真正面から向き合っていく。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、土居志央梨、平岩紙、戸塚純貴、三山凌輝、和田正人、毎田暖乃、青山凌大、今井悠貴、菊池和澄、平田満、余貴美子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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