『虎に翼』梅子が持つ“芯の強さと優しさ” 鷲尾真知子が見せる表情の振り幅にゾッとする

『虎に翼』母・梅子が持つ”芯の強さ”

 第63話は息子たちを思う梅子の強い気持ちに心動かされる回なのだが、梅子の義母・常(鷲尾真知子)の言動も心に強く印象を残す。「私は、徹太には面倒を見てほしくない」と言った常だが、決して梅子や他の息子たちを思って言った言葉ではない。

「梅子さん、あなたが悪いんですよ」
「あなたが徹太の嫁をきちんとしつけないから」

 悪びれる様子もなく、さも当然といった言動にゾッとした視聴者もいるのではないだろうか。常が光三郎の扶養に入りたいというのも、梅子が自分の世話をしてくれるはずという自己中心的な理由からだ。心優しい光三郎はその要求を受け入れる代わりに、「お母さんに意地悪しない、命令しない」約束をするよう常に念押しした。ここでは、常を演じる鷲尾の演技がよりいっそうこの家族の不穏さを感じさせてくれる。

 鷲尾は一瞬、梅子の顔を冷たいまなざしでじっと見た後、光三郎の前で見せるおばあちゃんの表情に戻り、「いいですよ、約束しましょう」と言う。異なるまなざしが梅子への無関心さを際立たせる。光三郎に向けられた「いいですよ、約束しましょう」という物言いがどんなに優しそうに聞こえても、梅子に見せた一瞬のまなざしが、常に梅子への態度を変える気はないことをあらわにしている。

 寅子は梅子が光三郎のことを立派な青年に育てたことを嬉しく思うも、大庭家の問題はいまだ平行線をたどるままだ。梅子の望みは叶うのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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