『劇場版モノノ怪 唐傘』で輝く薬売りの圧倒的な美 独創的な“大奥”で妖艶さが引き立つ
『モノノ怪』の独創的なビジュアルで描く「大奥」
『モノノ怪』ならではの美術やデザインにも注目だ。彼が旅する舞台は、江戸時代風を基調にしつつも、どこか不思議な雰囲気漂う幻想的な世界。テレビシリーズから受け継がれる紙テクスチャから成る画面や、鮮やかな色遣いをはじめとした独創性豊かな世界観は、国内外で高い評価を得ている。
『劇場版モノノ怪 唐傘』の舞台は、男子禁制の別世界たる大奥。今回舞台となる大奥では、江戸時代の画壇を代表する円山応挙を思わせる子犬の絵が印象的に登場する場面も。応挙といえば、足のない幽霊を初めて描き、想像と現実が入り混じる世界を追求した画家。その世界観は真実と嘘が交錯する大奥の雰囲気にぴったりで、“単なるオマージュ以上の意味を持つ背景”として観ているこちらの想像力をくすぐる。
過去のテレビシリーズも、エピソードごとに個性豊かな美術で彩られてきた。「座敷童子」では浮世絵や目黒雅叙園を思わせる背景、「海坊主」ではクリムト風の色彩豊かな美術、「のっぺらぼう」では尾形光琳の「紅白梅図屏風」を連想させる屏風絵など。「鵺」では他の回とは一線を画すモノクロ調の水墨画タッチ、「化猫」では大正モダンな雰囲気を醸し出すデザインと、バラエティに富んでいる。
ところどころに登場する小物やモチーフには様々な解釈の余地があり、それを考察するのもまた『モノノ怪』の楽しみの一つ。劇場を出た後は、大奥を彩る背景美術についても、誰かと語り合いたくなること間違いなしだ。
そして、これまで「座敷童子」で女郎屋の闇や「化猫」の大正時代の職業婦人など、時代が抱える女性の悩みを投影してきた『モノノ怪』。劇場版の大奥という特殊な環境で繰り広げられる物語にも大いに期待してほしい。
煌びやかにして妖しい、女だけの園・大奥。その奥深く、秘められた闇の中で、薬売りが出会う新たな怪異とは一体何なのか。神秘のベールに包まれた扉が、この夏、再び静かに開かれようとしている。その幽玄にして妖艶な世界観に、私たちは今一度魅了されるのだろう。
映画公開に先駆けて過去シリーズが放送へ
また、映画公開に先駆けて、『怪 〜ayakashi〜 化猫』(2006年)と、テレビアニメシリーズ『モノノ怪』(2007年)がテレビ東京ほかにて放送されている。
TVアニメ『怪 ~ayakashi~ 化猫』『モノノ怪』が地上波で復活 テレ東にて6月12日より放送
2006年に放送されたアニメ『怪 〜ayakashi〜 化猫』がテレビ東京にて6月12日より放送、2007年に放送されたTVアニ…
特に、薬売りがモノノ怪の「形(かたち)・真(まこと)・理(ことわり)」を明らかにしていく過程は、『モノノ怪』の物語の核心部分だ。この独特の設定を事前に理解しておくことで、物語の面白さをより感じられるようになるだろう。どの回を観てもこの設定に触れることができるので、ぜひ1話でも視聴しておくことをおすすめしたい。
■放送情報
『怪 〜ayakashi〜 化猫』(全3話)
大詰め(第3話):テレビ東京にて、6月26日(水)25:30〜放送
『モノノ怪』(全12話)
テレビ東京系にて、7月9日(火)スタート 毎週火曜24:00〜放送
■公開情報
『劇場版モノノ怪 唐傘』
7月26日(金)全国公開
キャスト:神谷浩史(薬売り役)、黒沢ともよ(アサ役)、悠木碧(カメ役)、花澤香菜(北川役)、小山茉美(歌山役)、戸松遥(大友ボタン役)、日笠陽子(時田フキ役)、甲斐田裕子(淡島役)、ゆかな(麦谷役)、梶裕貴(三郎丸役)、福山潤(平基役)、細見大輔(坂下役)、入野自由(天子役)、津田健次郎(溝呂木北斗役)
監督:中村健治
キャラクターデザイン:永田狐子
アニメーションキャラデザイン・総作画監督:高橋裕一
美術設定:上遠野洋一
美術監督:倉本章、斎藤陽子
色彩設計:辻󠄀田邦夫
ビジュアルディレクター:泉津井陽一
3D監督:白井賢一
編集:西山茂
音響監督:長崎行男
音楽:岩﨑琢
主題歌:アイナ・ジ・エンド「Love Sick」(avex trax)
プロデューサー:佐藤公章、須藤雄樹
企画プロデュース:山本幸治
制作:EOTA
製作:ツインエンジン
©︎ツインエンジン
公式サイト:https://www.mononoke-movie.com/
15周年記念サイト:https://www.mononoke-15th.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/anime_mononoke
公式Instagram:https://www.instagram.com/mononoke_movie_official/