『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』続編映画としてなぜ異質? 監督の気概を読む

アクション映画+パニック映画+スパイ映画のてんこ盛り

 この映画が明確に『ジュラシック・パーク』と接続していることを象徴する人物が、もう一人いる。バイオシン社CEOのドジスン(キャンベル・スコット)だ。彼は世界的なクライシスを巻き起こして巨万の富を得ようとする、最低最悪なキャラ(AppleのCEOティム・クックに激似なのは、単なる偶然か?)。

 実はこのドジスン、『ジュラシック・パーク』にもちょこっとだけ登場していた。プログラマーのネドリー(ウェイン・ナイト)を買収して、恐竜の胚を盗むためシェービング・クリームの缶を渡していたアイツである。ジュラシック・パークを崩壊に導いた男が、『ジュラシック・ワールド』最終章の悪役として再降臨したのだ。ラスボス感が凄い!

 そして『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』には、今までのシリーズにはなかった要素……「スパイ映画」としてのスパイスがふりかけられている。巨大イナゴの大量発生には、ドジスンが大きく関わっているのではないか? そんな疑念を抱いたグラントとサトラーは、マルコムの協力を得てバイオシン・サンクチュアリに潜入。その野望を解き明かしていく展開が、めちゃめちゃスパイ映画的なのだ。

 監督のコリン・トレボロウ自身、「(本作には)ジェイソン・ボーンやジェームズ・ボンドといった、スパイ映画の要素も少し含まれている。スパイ映画であり、恐竜にまつわるサイエンス・スリラーなんだ」とコメント。(※2)恐竜が世界中に放たれた世界を描くなら、普通は都市部でのパニックアクションを目指したくなるものだが、それでは『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』のクライマックスと同じになってしまう。トレボロウはあえてそれを封印して、これまでになかったエッセンスをブチこんだのだ。

 『ジュラシック・パーク』レジェンド組を再招集させるにあたって、その決断は非常に聡明だったといえる。90年代は恐竜とタイマン張ってきた彼らも、すっかり白髪が目立つ年齢に。グラントを演じるサム・ニール、マルコムを演じるジェフ・ゴールドブラムは今や後期高齢者だ。彼らに激しいアクションを演じさせるのは、さすがに酷すぎる。

 アクションパートはオーウェンとクレア、彼らをサポートする新キャラのケイラ(ディワンダ・ワイズ)に任せ、スパイサスペンスのパートをレジェンド組に委託することで、本作はアクション映画+パニック映画+スパイ映画というてんこ盛り状態となった。

 新旧オールスターを召集して、『ジュラシック・パーク』シリーズと『ジュラシック・ワールド』シリーズを完全リンクさせ、あらゆるエッセンスをクロスオーバーしてみせた、コリン・トレボロウ監督の心意気溢れる一本。『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』というタイトルは、「ハリウッドの新たなる支配者は俺やで!」という、トレボロウ魂の叫びなのかも。たぶん違うけど。

参照

※1. https://movieweb.com/jurassic-world-3-laura-dern-ellie-sattler/
※2. https://collider.com/jurassic-world-3-plot-comments-colin-trevorrow/

■公開情報
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
日本テレビ系にて、5月31日(金)21:00〜23:29放送 ※放送枠35分拡大
監督:コリン・トレボロウ
脚本:エミリー・カーマイケル、コリン・トレボロウ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニール、ディワンダ・ワイズ、マムドゥ・アチー、BD・ウォン、オマール・シー、イザベラ・サーモン、キャンベル・スコット、ジャスティス・スミス、スコット・ヘイズ、ディーチェン・ラックマン、ダニエラ・ピネダ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
ストーリー原案:デレク・コノリー、コリン・トレヴォロウ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー、コリン・トレヴォロウ
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