『虎に翼』伊藤沙莉が時を経て“はじまりの場所”へ “食べること”が意味する“生きること”

 食べること一つ取っても、そこには様々な意味がある。映像作品では、生きることの象徴、死との対比を担うことが多い。焼き鳥の串を見つめながら、優三への思いと理不尽な死への怒りをぶつける伊藤沙莉の演技は、相反する感情を涙と表情に昇華していた。

 小道具としての焼き鳥の真価はその後に発揮された。包んでいた新聞紙を広げて、目に飛び込んできたのは新憲法の条文。ここで第1話につながる。寅子の視線は、憲法14条にくぎ付けになった。

 一言一句を目で追い、嗚咽する寅子。全ての人の平等を宣言する条文は、それまでの人生を肯定するメッセージとして響いたのではないか。愛する人の死を受け入れる過程と作品の主題を提示する練られた演出だった。

 第44話はドラマ全体の転換点だった。第1話の時点から振り返ると、第9週までは過去のエピソードで、ここからは現在進行形のストーリーが語られる。寅子にとってまだ見ぬ未来であり、新憲法とともに歩むことになる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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