仲野太賀が『虎に翼』にもたらすグルーヴ感 佐田優三の“抜け”や“隙”は熟練の域に

 優三が意を決して口にする言葉の多くは、私たち視聴者の声を代弁するようなものだったのではないだろうか。そしてこれが『虎に翼』における作品の緩急の“急”だとするならば、彼が生み出す抜け感は“緩”だ。力を入れるべきところでは入れ、抜くべきところでは抜く。基本的には引いておいて、ここぞというときには押す。

 こういった仲野の演技の力加減やタイミングを読むセンスに唸らずにいられないのはもちろんだが、やはり何よりすごいのは、『虎に翼』という作品の物語の流れの中で、“仲野太賀=佐田優三”がどのように在る(=存在する)べきかを正確に把握していたことだろう。仲野のポジショニングの正確さから生まれた軽妙な掛け合いによるグルーヴ感が、本作の手触りにも大きく影響している。“ロス状態”が生じるのは当然。かくいう筆者もそうなのだから。

仲野太賀、『虎に翼』になくてはならない存在に 優三の複雑な心情を細部まで誠実に描写

NHK連続テレビ小説『虎に翼』第6週「女の一念、岩をも通す?」が放送された。高等試験司法科に挑んだ寅子(伊藤沙莉)は、2度目の挑…

 仲野はまだ30歳を過ぎたばかりだが、演技者としてはすでに熟練の域にある。大袈裟かもしれないが、これに異を唱える人はあまりいないのではないだろうか。2026年に放送予定の大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合)での主演が内定しているのも、彼が幅広い層から支持されていることの証。

 『虎に翼』の主演の伊藤とは、『拾われた男 LOST MAN FOUND』(2022年/NHK BSプレミアム)で夫婦役を演じたこともある。いま再び、寅子はつまずいているところだ。優三には一刻も早く戻ってきてもらい、意を決した言葉や抜け感で勇気づけてほしい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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