『光る君へ』“父”井浦新が乗り移った三浦翔平の芝居　「皇子を産め」に込めた複雑な感情

　伊周はカッと目を見開いて定子を睨みつけ、その口元には激しい苛立ちが滲んでいる。「こうなったらもう、中宮様のお役目は、皇子を産むだけだ」と定子を侮蔑するような物言いで吐き捨てた伊周が続けた言葉に背筋が凍った。

「皇子を産め」

　三浦はインタビューで「道隆の『皇子を産め』というシーンがあるんですけど、そこを見せてもらって、そこをリンクさせたいなという思いがあったので、監督と話して、『道隆が乗り移っているかのようなシーンにしてほしいです』とお願いをして撮りました」と話している。三浦の思惑通り、一族の繁栄を願うあまり狂気に満ちた表情で定子に迫った父・道隆の姿が重なった。全く同じ言葉で定子を追い詰める三浦の演技は恐ろしい。あまりにも激しい憤怒の表情に思わずおののくが、三浦が見せるのは単なる怒りの感情だけではない。「悔しかったら皇子を産んでみろ」と定子を睨みつけた時、その瞳が少し潤んで見えた。その眼には公卿たちの前で恥をかかされたという思いが感じられた。伊周はその恥ずかしさと怒りを、妹の定子にぶつけていたのではないだろうか。

　道長が右大臣となった折、伊周は頭を下げながらも道長をギロリと睨みつけていた。伊周と道長の争いはまだまだ続く。どんどん崩れていく伊周の人物像を三浦がどのように見せてくれるのか楽しみだ。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送／ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演：吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作：大石静
音楽：冬野ユミ
語り：伊東敏恵アナウンサー
制作統括：内田ゆき、松園武大
プロデューサー：大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー：川口俊介
演出：中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供＝NHK