『ブギウギ』は趣里×草彅剛の物語だった 愛と勇気を届けた最高のラストステージ

 筆者は朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)を観ていて、2020年度前期に放送された『エール』を時折思い出すことがあった。

 『エール』は「イヨマンテの夜」や「長崎の鐘」など、「東京ブギウギ」と同じ昭和20年代にヒットした戦後歌謡を生み出した作曲家・古関裕而をモデルにした古山裕一(窪田正孝)の物語だ。自身が作曲した戦時歌謡を歌い戦死していく若者に酷く心を痛める裕一と、自分の歌声に背中を押される形で出征していく若者を目の前にする茨田りつ子(菊地凛子)。立場や関係性はまるっきり違うが、最終回を前にしたセミファイナルの回に、羽鳥善一(草彅剛)がスズ子(趣里)に嫉妬心とともに最高の存在であることを打ち明ける展開は、同じ作曲家である小山田耕三(志村けん)が生前に裕一(窪田正孝)への嫉妬と焦りから冷たく接していたことが残された手紙から明らかになるところまで、不思議とリンクしている。作曲家と歌い手、スズ子はその関係性を人形遣いと人形と例えていたが、そんな一生涯をかけたパートナーは裕一にとって誰だったのかと考えた時、『エール』は裕一とその妻でありヒロインの音(二階堂ふみ)の物語であり、『ブギウギ』はスズ子(趣里)と善一(草彅剛)の物語だったのだと思えた。

 そして、『エール』の最終回がキャスト総出演の「『エール』コンサート」だったのに対して、『ブギウギ』もまた歌手・福来スズ子の最後のステージ「さよならコンサート」にて幕を閉じる。秋山(伊原六花)、リリー(清水くるみ)、桜庭(片山友希)といったUSK時代の仲間をはじめ、水城アユミ(吉柳咲良)まで、福来スズ子という歌手を作り上げてきた一人ひとりが集結。ツヤ(水川あさみ)や梅吉(柳葉敏郎)、六郎(黒崎煌代)、そしてダデーこと愛助(水上恒司)もきっとどこかでスズ子の晴れの舞台を見守っていたことだろう。はな湯の面々や福来スズ子とその楽団メンバー、小夜(富田望生)とサム(ジャック・ケネディ)など、祝花や祝い状にてしっかり登場させるところはスタッフ陣の愛が感じられる。

 幕が上がるとシャンパンゴールドのロングドレスを着たスズ子が、オーケストラピットに頷く。驚くのは善一が指揮者としてではなく、ピアニストとして参加していること。善一がピアノで弾き始めたのは「東京ブギウギ」。しっとりと始まったバラードのそのアレンジは、まるで2人が最後のステージを名残惜しく思うように、あるいは最後のセッションを思いっきり楽しく終わろうという並々ならぬ思いも見えてくる。歌い出しからハラリとスズ子の瞳からこぼれ落ちる涙。善一の「トゥリートゥーワンゼロ!」を合図に、オーケストラが一斉に音を鳴らし、客席までもが動き出す。指揮を振るのは、本作の音楽を担当する服部隆之。善一のモデルとなった服部良一の孫であることを考えると、夢の共演である。

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