『ブギウギ』趣里×草彅剛、“1回のみ”の本番の裏側 脚本・足立紳による集大成のセリフも
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターに上り詰める姿を描いたが物語が、いよいよ3月29日に最終回を迎える。
第125話では、歌手の引退を巡って仲違いしていたスズ子と羽鳥(草彅剛)が対峙。存分に互いへの思いを語り合った。同シーンは本番1回で撮影されたといい、制作統括の福岡利武は「やり取りが長いので、すごく緊張感がありました。おふたりとも静かに本番への思いを高めていらっしゃって、すごく集中されているなと。とにかく草彅さんの思いも強いですし、会話が進むにつれて趣里さんも感極まっているようでした。羽鳥家で『歌手を辞めます』と言ったシーンもそうですが、ものすごく熱のこもったお芝居でしたね」と振り返る。
なかでも印象的だったのは、「ワテはいつまでも先生の最高の人形でおりたかった」というスズ子の言葉。福岡は「笠置さんご自身が、“人形と人形遣い”とおっしゃっていて、本当に深い言葉だなと。『死ぬまで歌う』という覚悟でやっている茨田りつ子(菊地凛子)とは違って、スズ子には歌手としての自分を客観視しているところがあった。笠置さんの本から着想を得ていますが、足立(紳)さんの脚本を読んで面白いなと思いました」と印象を明かす。
“人形と人形遣い”と聞いて思い出されるのは、やはり牧野惇が手掛けたタイトルバック。だが、意外にも意図して制作されたものではないそうで、「スタッフから『タイトルバックって、そういう意味だったんですね!』と聞かれて驚きました(笑)。タイトルバック制作をお願いした頃には、そこまで脚本は出来ていないのであくまで偶然ですが、“スズ子と羽鳥の関係性”を思いながら観ていただいてもいいのかな、と思っています」と不思議な縁への思いを語る。
一方、羽鳥が打ち明けたのは、スズ子への嫉妬心。具体的に、モデルとなった服部良一がそういった発言をしたとの史実はなく、足立紳によるオリジナルの展開だという。
「足立さんは服部良一さんの資料をたくさん読まれて、それを羽鳥善一に落とし込んでくださいました。善一が胸の内を吐露する場面は、足立さんも狙って書いたというよりは、資料を参考に自然に書いていった中で生まれたセリフだと思います。これまでスズ子と関係を積み重ねてきて、そういった嫉妬心があったことに初めて善一が気づく。これは、足立さんの思いの集大成でもあります」
スズ子の引退の根本にあるのは、歌い手として感じた自分自身の限界。これまで「思うように歌えない」「体が動かない」といったスズ子の心情が描かれなかったことについて、福岡は「第25週から世代交代は意識してきましたが、スズ子の思いを見ている人に伝えるというよりは、羽鳥善一に共感してほしいなと。『まだ辞めなくてもいいのでは?』『まだまだイケるでしょ』と周囲のみんなが思っている中で、視聴者の方にもそう思っていただきたいなというところでした」と説明する。