『ガンダムSEED』シリーズを新たな視点で“解体” NHK『アニメが問う戦争と未来』を見て

 「今まで仲のよかったグループから突然1人が排斥されはじめることはよくある。それがもっともミニマムな“諍いの根っこ“じゃないのか」と生前に語った両澤千晶の言葉通り、ナチュラル側に味方してガンダムを駆るコーディネイターのキラ・ヤマトは、その秀でた特別感ゆえに次第にナチュラルの友人たちから浮いていく。今まで仲が良かった友人の輪から外されたキラもまた、理不尽さに怒りを爆発させてしまう。そして幼なじみのキラと敵対する、もう1人の主人公アスラン・ザラも、大切な友人をキラに殺されて憎しみを募らせる。

「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで本当に最後は平和になるのかよ!! えぇ!?」

 これは『ガンダムSEED』第31話に出てくる名台詞だ。戦争だからとはいえ、互いの大事な仲間を殺され、怒りに任せて殺すことで報復の連鎖が起こる暴力の世界は、みんなが同時に止めようよと思わない限り終わらないのだ。そう語る宮川恭夫と、最初から企画書の中に前述の第31話のシーンを盛り込んでいた福田己津央の証言は特に印象深い。 

 今回のNHK『ガンダムSEED』特番は、2年にわたるテレビシリーズの膨大なシーンの中から、インタビュー証言者のコメントに合わせて適切な場面を選び出し、両澤が生前に遺した発言、映画化に向けてやりとりしたメールの数々、映画館で鑑賞したばかりのファンの感想、海外の『ガンダムSEED』ファンの声などを集め再構成したドキュメンタリーとして大変充実した番組だった。放送終了後にX(旧Twitter)で福田監督が発信した内容では、放送時間の何十倍もの素材を集めた中から作られた番組だそうで、スタッフの編集手腕に感心していた。願わくばいつか、さらに拡張された完全版が観たいものだ。

■配信情報
『アニメが問う戦争と未来 〜ガンダムSEEDの20年〜』
NHKプラスで配信中
出演:福田己津央、宮河恭夫、竹田靑滋、重田智、吉野弘幸、両沢和幸、志田香織、田中理恵、西川貴教
語り:小林千恵アナウンサー
 写真提供=NHK

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