実写版『【推しの子】』黒川あかね役に抜擢 茅島みずきが“天才女優”にハマる理由

 一方、『教祖のムスメ』(MBS)で演じた、周囲の生徒たちを妖しい魅力で翻弄する謎の転校生・桐谷沙羅や、前述した『最高の教師』で演じたクラスを混乱に陥れる問題児・西野美月で見せた悪役ぶりは大人びた外見が怪物性を増幅しており、若手女優の中では群を抜いている。そして、もっとも鮮烈だったのが、2023年に放送された『明日、私は誰かのカノジョ シーズン2』(MBS/TBS)で演じた、大学を休学して高級ソープランドで働く伊織だ。

 をのひなおの同名漫画(Cygames)をドラマ化した本作は、レンタル彼女やパパ活を通して金を稼ぐ女性を主人公にしたオムニバスドラマだ。

明日、私は誰かのカノジョ シーズン2|PV 30秒

 茅島が演じる伊織は風俗で働くお金こそ全てと考えている女性だったが、たまたま客としてやってきた配信系アイドルグループの青年に恋をして付き合うことになり、その結果、さまざまなトラブルに巻き込まれていく。

 伊織は面白いキャラクターで、対話する相手によって話し方や表情に微妙な変化があることで、表面的には「お金が全て」と考える人間を信じない魔性の風俗嬢に見えるのだが、自分で思っているほど、ドライな人間ではなく、だからこそ配信系アイドルの青年との恋愛関係にハマっていく。劇中で描かれる彼女の変化はとても自然かつ人間味溢れるもので、伊織の中にある多面的で複雑な心情が、茅島の演技によってシームレスに結びついていた。

 茅島が演じた悪役系ヒロインの芝居には、正体を欺くために嘘の自分を演じる場面が繰り返し登場する。

 『【推しの子】』の黒川あかねも“天才女優”という演じる存在だ。彼女は、独自のプロファイリング技術によって演じる役を分析することで、心身ともに役になり切ることができる天才女優で、窮地に追い込まれた彼女が演技の力で危機を乗り越える姿が原作漫画の見せ場となっている。

 女優を演じるということは「何かを演じている存在について演じる」という二重の演技が求められるため、難易度がとても高い。その一方で、演技の深淵に最も深く踏み込むことが求められるため、役者にとって最もやりがいが感じられる役なのかもしれない。

 そんな黒川あかねの天才的芝居を茅島がどう演じるのか、今から楽しみだ。

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