『ゴジラ-1.0』にあってハリウッド版に足りないものは? 宮下兼史鷹が“泳ぐゴジラ”に感動

「山田裕貴さんのキャラクターが一番感情移入できた」

――特に気になった俳優はいますか?

宮下:浜辺美波さんはすごく昭和の雰囲気が合う女優さんだなと思って。顔の作りというか、醸し出す雰囲気が本当に昔の映画に出てきそうだな、と今回の映画で改めて思いました。しがらみとかいろいろな気遣いをすっ飛ばして、自分なりにやりたい演技ができていたんじゃないかと思うくらい、良かったです。彼女への評価がまだ一段上がった気がしますね。

――神木さんと共演されたNHK連続テレビ小説『らんまん』とも違う印象でしたね。

宮下:もう一人気になったのが、山田裕貴さん。彼の演じるキャラクターが、僕は本作で一番感情移入できました。彼が演じる水島って、戦争に行けなかった世代の人なんですよね。子供の頃から「戦争に行って戦うことが正義」みたいな教育を受けてきて、本当は戦争に行けなかったことって幸せなことではあるけど、彼は「俺は行けなかったからどうしようもないんだ」みたいに思ってしまっている。なんかそういう気持ちがわかるというか。例えば「俺はバブルを知っている、お前は知らないだろ」とか、その時代を知らないことが恥に思えてしまうような教育がされてきた世代ってすごく苦しいと思うんですよね。僕らなんか「ゆとり世代だからだろ」みたいに言われてしまう。そこで決めつけられてしまう、その苦しさの中で水島は最後に一皮剥けるんですよ。あれがすごく泣けますね。「(戦争に)行かなかったから、なんなんだ!」って。それがステータスの全てじゃないぞってことを彼のキャラクターが証明してくれる。ぜひそこも注目していただきたいですね。

――海外で現在『ゴジラ-1.0』が大ヒットしている件に関してはどう思いますか?

宮下:『ゴジラ-1.0』は日本が世界に誇れることを全部詰め込んだ映画だなって思います。“誇れる”っていうと少し語弊があるんですけど、やはり戦地中のボロボロになった日本って、もうあの時代にしかない景色なんですよね。復興していく様子をうまく描写できるのって日本映画ならではだし、その日本人だからこその感覚も強く根付いているところが感じられる。そこに日本を代表する怪獣・ゴジラが出てくるわけですよ。山崎貴監督は、昭和を舞台にした『ALWAYS 三丁目の夕日』も撮っていて、その時代の日本人の趣や温かさみたいなものを描くのが上手い方だと思います。それら全ての要素が合わさって、とんでもなく素晴らしいゴジラ映画が生まれたんだと感じました。

――本作は、日本映画として初めてアカデミー賞視覚効果賞にもノミネートされましたね。

宮下:ちょうど海外ではハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』を起点とした「モンスター・ヴァース」も人気で、そこに『ゴジラ-1.0』が飛び込んだおかげで、今「ゴジラ」の熱がすごく高くなっている。ハリウッド版は、人間ドラマというより、CGのすごさやメカニック、怪獣の大決戦みたいなものを主にしているけど、本当に素晴らしいんですよ。迫力満点で、映画館で観るのにふさわしい。ただ、僕はハリウッド版に一つだけ難癖をつけるとすると、やはりゴジラって神々しいものだと思っているんですよ。神の一種として信仰されている感じとか、ああいう雰囲気が僕はすごく好きなので、そこが少し海外のゴジラに足りないように感じてしまいます。ぜひ、今後は日本のスタッフもたくさん入れて、共同という形でその神々しさを保ちつつ海外の予算感とダイナミックさが合わさったら、またさらにとんでもないゴジラが生まれるんじゃないかという期待を抱いています。

■公開情報
『ゴジラ-1.0』
全国東宝系にて公開中
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介ほか
監督・脚本・VFX:山崎貴
音楽:佐藤直紀
制作プロダクション:TOHOスタジオ、ROBOT
配給:東宝
©2023 TOHO CO.,LTD.
公式サイト:https://godzilla-movie2023.toho.co.jp
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