『魅惑の人』“男装ヒロインもの”最大の見せ場が到来 チョ・ジョンソクの想い溢れるキス

 そして、ここから物語は折り返し、前半部分のクライマックスへと突入する。インがモンウに告白する姿を見ていた女官によって、宮殿中にインに男色の噂が広まる。これまで王妃たちの誰とも共寝をしたことのないインの噂は、宮廷にとどまらず民たちにも広がりを見せた。モンウは、男色の噂が広がっていることをインに聞くが、インは気にしない様子を見せる。

 町の様子を見に出かけたインとモンウは、碁をしている祖父と孫の勝負に交ざり、楽しい時間を過ごす。インは、笑うモンウの姿を愛おしそうに見つめ、モンウに「お前が女人であれば妻に迎えていただろう」と告げる。ここでもインの瞳が「好きだ」「かわいい」と能弁に語っている。インのモンウへの思いがダダ漏れで、観ていて甘酸っぱく、「早く女性だとバレてー!」という気持ちでいっぱいになる。

 そして、とうとうその時が来た。男装ヒロインが女性だとバレるのは、男装ヒロインものの最高の見せ場のひとつだ。どんなシチュエーションでバレるのかしら? その時彼は一体どんな顔をするのかしら? と、見せ場に向けて、着々と胸キュンジェットコースターは上昇していく。

 酔ったモンウを介抱し、布団に寝かせて衣服を緩めようとしたイン。インの様子に気づいたモンウは、慌てて飛び起き悲鳴を上げる。そんなモンウの様子を訝しむイン。「キャッ!」ともろに女性の驚き方で涙を浮かべるモンウを見たインは、「まさか……」と思いを巡らせる。「そうです! そのまさかです、チョーナー(王様)!」と大声で言いたい気持ちで、なりゆきを見守る。

 女性だと気づいて去ろうとするインに、「死ぬ前に」と近づきキスをするモンウ。ヒロインの軽いキスに、時が止まったようなイン。そこからは、熱いキスの応酬が繰り返される。これまでさまざまなドラマで、さまざまな俳優たちのキスシーンを大量に観てきたが、本作のチョ・ジョンソクとシン・セギョンのインとモンウが初めて交わしたこのキスシーンの熱量は半端ない。モンウへの想いが溢れる口づけは、大人の甘美さと真摯で純粋な想いが融合した、まれにみる素晴らしいキスシーンだった。

 男性だと分かっていながらも、恋心を抑えきれなかったインは、愛するモンウが女性だと知り、想いが止まらなくなる。しかし、モンウもインを愛する想いと、復讐を遂行しようとするアンビバレントな気持ちを抱え、頭と心の一致しない状態に悩み苦しむ。宮廷では、清に嫁入りする公主チャンリョン(アン・セウン)の替え玉事件もあり、今後インの立場が苦しむことが想像できる。晴れてインとモンウが幸せになる日が観られると信じたい。

■配信情報
『魅惑の人』
Netflixにて配信中
出演:チョ・ジョンソク、シン・セギョン、イ・シニョン、パク・イェヨン
演出:チョ・ナムグク
脚本:キム・ソンドク
(写真はtvN公式サイトより)

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