『魅惑の人』“男装ヒロインもの”最大の見せ場が到来 チョ・ジョンソクの想い溢れるキス

 Netflixで配信中の『魅惑の人』が面白い。カリスマ溢れる王を演じるチョ・ジョンソクと、男装ヒロインを演じるシン・セギョンによるロマンス時代劇として、Netflixグローバルランキング(非英語シリーズ)でも6位(2月5日~2月11日)と高い反響を呼んでいる。

 本作は、朝鮮が清に侵略された時代の朝鮮王朝を舞台に、王と王に復讐を誓う男装ヒロインが愛し合いながらも、宮中に渦巻く陰謀に巻き込まれていく宮廷ロマンスだ。朝鮮王朝の王イ・インを演じるのは、ミュージカル界のスターからドラマ界のスター街道を突っ走るチョ・ジョンソクだ。『賢い医師生活』でのコミカルな演技から一転、本作ではカリスマ溢れる王を熱演し、視聴者を魅了している。ヒロインを演じるのは、チャ・ウヌと共演した『新米史官ク・ヘリョン』で煌びやかな美しさと凛とした佇まいを見せたシン・セギョン。本作では、男装ヒロインとして王を魅了するカン・ヒス役を演じている。

 物語は、王インがまだチナン大君だった頃、清の人質となったところから始まった。宮廷の権力者である領議政カン・ハンスン(ソン・ヒョンジュ)の娘であるシン・セギョン演じるヒスは、天才的な碁の才能を活かし、男装をして囲碁の賭け棋士として活躍していた。ひょんなことからインと出会い、女性だということを言い出せないまま彼との関係が深まっていく。

 第5話、第6話を振り返ってみると、インとモンウがどうにもならない心に翻弄されていくのがわかる。聡明で、純粋なチナン大君が、ヒスを小雨を表現する「濛雨(モンウ)」と名づけてから3年の月日が流れ、モンウは死んだものと思っていた王インは、冷酷で容赦のない王となっていた。インの前に宮廷の碁の相手である棋待令(キデリョン)として、モンウが現れた。インにしてみれば、自分のせいで死んだとばかり思っていたモンウが目の前に現れて驚愕するが、嬉しさ、驚き、喜びの前に自責の念と疑心暗鬼に苛まれる。

 一方のモンウは、インが先王の急逝によって王となったいきさつの中で、復讐を誓うもインに再会すると心が揺らぐ。互いに相手への恋慕の気持ちを持ちながら、宮廷の陰謀により離れ離れになってしまったインとモンウ。本稿では第7話から第10話を中心にご紹介する。

 インは、宮廷内で抱き合うモンウとキム・ミョンハ(イ・シニョン)を見て、顔色を変え怒りを露わにする。2人を詰問したインは、ミョンハを庇うモンウが気に入らない。モンウを大事に思うインは、モンウを疑う護衛武士のサンファ(カン・ホンソク)に「余は一度モンウを殺した。生きて戻ったゆえ何があろうとモンウを守るつもりだ」とモンウに対する思いを吐露する。「逆心を抱いていたらどうなさるのです」と諫めるサンファだが、インは、「ならば余計に守らねばな、余にとって逆心は忠臣だ」と言う。モンウの逆心にインが気づいた時に、この言葉の持つ意味がわかるだろう。インはモンウを前にどんな行動を見せるのか。

 インは、先王の祭祀を執り行う行幸に向かおうとするが、先王の子ムンソン大君(チェ・イェチャン)が同行したいと申し出る。インは、臣下たちの反対を押し切り、ムンソン大君と世話係のモンウも共に連れて行く。祭祀が終わり、小雨の降る中でインはモンウに「私はモンウを好いておる」と告白する。ここでの告白に至るまでのチョ・ジョンソクとシン・セギョンの芝居が素晴らしい。ふたりが演じるインとモンウにとって、モンウの名づけとなった「煙ぶるように降る小雨」は互いを想う演出として効果的に使われている。小雨の別の呼び方である濛雨(モンウ)を、ヒスが「別号(別の名前)としていただきたい」と言った日から、2人にとって小雨はただの雨ではなく、別の感情と熱を帯びた意味を持った雨となったのだ。インは、モンウと再会するまでの3年間、小雨が降ると調子を崩していたという。それほど、インにとってモンウは大切な存在だった。インであるチョ・ジョンソクの瞳には、恋する男のそれが宿り、モンウであるシン・セギョンを見つめる眼差しが「好きだ好きだ」と訴えかけている。モンウに拒否され、傷つき、心を尋ね、気持ちを伝えるチョ・ジョンソクの大きな目には静かだが熱い炎が宿っていた。

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