“ドラマ素人”だからこそ描けるものとは? 中京テレビの“味”が発揮された『裏切り飯』
志田彩良と伊武雅刀がダブル主演を務めるドラマ『こんなところで裏切り飯』(中京テレビ)が放送中だ。本作は、全国津々浦々の地元名物に隠れた一見どこでも食べられるような料理だが、期待を超える美味しさの“裏切り飯”をフィーチャーするハートフルグルメコメディ。全国ネットの人気バラエティ『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』で知られる中京テレビが贈る連続ドラマは、2023年放送の『スーパーのカゴの中身が気になる私』に続き2作目となる。
今回は、ドラマを手がけるのは今回が初となる浅田大道プロデューサーにインタビュー。数多くのグルメ番組を制作してきた局だからこそ出せる強みや、50歳差の志田と伊武の名コンビぶりについて語ってもらった。(苫とり子)
志田彩良と伊武雅刀が撮影の合間にプリクラへ
――これまではバラエティを中心に携わってこられた浅田さんが、ドラマを制作することになったきっかけを教えてください。
浅田大道(以下、浅田):連続ドラマ制作のプロジェクトが立ち上がるとともに局内で企画の募集が始まり、僕自身ドラマを作ってみたいという思いが以前からあったので、これを機に企画を提出してみようと思ったのがきっかけです。
――今回のドラマの構想は、浅田さんの中にすでにあったものなのでしょうか?
浅田:中京テレビはドラマを作ってきた歴史がない局なので、まずドラマ班全体で方向性について話し合い、『オモウマい店』や『PS純金』(※中京テレビで放送中のグルメバラエティ)などを手がけてきた弊社の強みである“グルメ”を1つの軸にしていくことになりました。“裏切り飯”というテーマは僕の中にはじめからあったわけではなく、実は他のプロデューサーや脚本家を交えた会議での雑談から生まれたものです。僕たちは普段から全国のいろんな場所にロケに行くことが多いのですが、現地で出演者の方と食事をご一緒したり、お店をご紹介することも多々あるんですね。その時に、やっぱり僕たちテレビの人間って少し天邪鬼といいますか、あっと人を驚かせたいという気持ちが強いので、ご当地グルメとは別のお店に出演者の方をお連れすることが多いんですよ。だから、会議でも「この間、愛媛で食べたグラタンが美味しくてさ」「え! グラタンですか」みたいな話になり、面白いなと思ったのでそのまま企画にしたのが今回のドラマです。あとは、先ほども言ったように弊社はグルメを特集するバラエティをたくさん作ってきたんですが、そこに対するある種のカウンターパンチになる企画だなと思ったんです。裏切り飯って一見どこでも食べられそうなものなので、もし自分がバラエティ班の人間としてリサーチしたら、多分取り上げないなと思ったんです。だけど、よく考えたら、愛媛に日本一美味しいグラタンや、茨城に日本一美味しいタイ料理があってもいいはずですよね。
――たしかに各地方にまだ発掘されていない“裏切り飯”がたくさん眠っていそうです。一方で、名物じゃないとなると範囲が広すぎてリサーチが大変そうだなと思いました。ドラマに登場するのはどれも実在するお店ですが、どのように見つけられたのでしょう?
浅田:あらゆる手を尽くしてお店を探しまくったんですが、やっぱり一番は経験値でした。例えば、ロケのドライバーさんやヘアメイクの方など、いろんなスタッフに聞いた話を元にリサーチしたら、本当に予想を裏切る料理がたくさん出てきたんです。そういう意味では、かなり生の情報が詰まったドラマになっていると思います。ガイドブックでも裏切り飯というジャンルは今までなかったと思うので、これを機に注目されればいいなと思います。2泊3日の旅行であれば、ご当地名物も楽しんでいただきつつ、1食ぐらいは“裏切り飯”を食していただけたら、より旅が楽しくなるのかなと思うので、ぜひ参考にしてほしいですね。
――本作は、伊武雅刀さん演じる日本有数のホテルチェーンを経営する豪腕社長の榊原総一朗と、志田彩良さん演じる謎の秘書・小野寺真理子が全国の”裏切り飯”を食すドラマです。50歳もの年齢差がある男女コンビを描こうと思った理由は?
浅田:同じグルメドラマで言うと、例えば、テレビ東京さんの『孤独のグルメ』のように1人の物語として完結するのではなく、「バディものにしたい」というストーリー軸はわりと早い段階からありました。その中でも50歳差の男女コンビにしたのは、年齢や性別が違っても食卓を囲むことで共有する時間が生まれると思ったからです。たとえ国籍が違っても、言葉を超えられる瞬間が必ずそこにはある。伊武さんもおっしゃっていましたが、誰かと一緒だからこそ美味しい食卓の場を、年齢が親子、もしくはおじいちゃんと孫ほど違う2人でも共有すれば、関係を深められるということを描けたらなと思いました。
――そこに志田さんと伊武さんをキャスティングされた理由を教えてください。
浅田:元々、志田さんは出演作の日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系)などを拝見していて、素晴らしい演技をされる方だなと気になる存在ではあったんです。そんな中で、無口で無愛想な秘書という真理子のキャラ設定を考えた時に志田さんの顔がバシッとハマったんです。榊原に関しては、強面で社員全員から「鬼の榊原」と恐れられるという設定なので、こう言うとご本人から怒られてしまうかもしれませんが、これはもう伊武さんしかいないだろうと(笑)。
志田彩良×伊武雅刀、互いの“裏切られた”魅力は? 『裏切り飯』撮影の醍醐味を語り合う
志田彩良と伊武雅刀がW主演を務めるドラマ『こんなところで裏切り飯』が中京テレビほかにて放送中だ(TVer、Hulu、Locipo…
――取材を経て(志田彩良×伊武雅刀、互いの“裏切られた”魅力は? 『裏切り飯』撮影の醍醐味を語り合う)、より榊原は伊武さんにぴったりな役だなと思いました。怖い方なのかなと思いきや、実はチャーミングでボソッと面白いことをおっしゃられる方ですよね。
浅田:そうなんです。実はドラマにも伊武さんのアドリブのシーンがたくさんあって、急に踊り出したり、面白いリアクションを取ったりするので、監督や映像カメラマンが思わず笑っちゃうことも多々ありました(笑)。これまでは医者やマフィアのボスなど、重厚感のある役柄が多かった伊武さんの、強面なのにかわいい、“かわおじ”的ニュアンスが皆さんに伝わればいいなと思っています。
――ずっと注目されていたという志田さんとは実際にお仕事をされてみていかがですか?
浅田:クランクアップの時にもお伝えしましたが、初めて挑戦させていただいたドラマの主演が志田さんで良かったという一言に尽きます。短期間のスケジュールで全国ロケに行って、連日早朝から夜遅くまで撮影がある中で、主演の志田さんは出番も多いのに僕らスタッフのことまで気を使っていただき、いつも現場を明るく盛り上げてくれる存在でした。僕なんかが言うのは偉そうですけど、プロ根性があって、かつ気さくで素晴らしい俳優さんだなと思いました。
――取材の時のおふたりを見て、お互いに変に気を使い合っている感じもなく、テンポ感が似ているような気がしました。
浅田:いや、もうナイスコンビネーションでしたね。顔合わせの時がおふたりの初対面だったんですが、はじめは伊武さんの方が照れちゃって(笑)。チラチラッと志田さんの方を見るばかりでどうなるかと思いきや、撮影に入ると意外と気さくにお話しされていて、どんどん仲良くなっていかれました。最終的には2人で撮影の合間にプリクラ撮りに行ってましたからね! ちなみに、伊武さんは人生初のプリクラだったみたいです(笑)。伊武さんご本人もクランクアップの際に、「今回は志田さんに引っ張ってもらって、すごく楽しかった」っておっしゃっていたのが印象的でした。