『相棒』右京と亀山の子供への接し方に表れた差異 殺人事件が起こらない珍しい展開に

『相棒』殺人事件が起こらない珍しい展開に

 子供を目の前にすると、右京と亀山の性格の違いがよく出てきて、とても興味深い。亀山は自分が話しかけるか否かにかかわらず、その子が話し出そうとする時は必ず屈んで目を合わせようとする。また、その子に質問する時はなるべく簡単な言葉を使うようにしているようだ。そこに子供を馬鹿にする意図はなく、安心させたいという気持ちが見えてくる。亀山は自分が子供には、異様にデカく、強面の顔がさらに怖く見えることが分かっているのかも知れない。右京と亀山を比べれば亀山の方が子供には好かれやすいが、その理由はこういう些細な行動ができるからなのだろう。

 一方の右京は子供に少し苦手意識があるよう。だが、どんな年齢の子でも紳士的で温厚な態度を崩さず、いつも敬語で接している。これはその子を1人の人間として扱っているとも言えるのではないだろうか。右京のそんなところが今回は、行動にもよくあらわれていた。前回、趣味であるチェスで改めてその強さを証明してみせた右京は、今週、チェスと似ているところもある将棋に挑戦。だが、やはり奨励会に入れる実力を持つ宗介のほうが強かった。「右京が勝ったら善家について詳しいことを話す」という条件だったのでこの時は、事件の核心に迫ることは聞くことができなかった。しかしその後、宗介がチェスもできることを知った右京は、チェスで勝負を挑み、今度は宗介をコテンパンに負かしたのだった。いくら事件解決のためとはいえ、やや大人げなくも見える。でも子供だからといって手加減せず、全力を出す。こんな大人も時には必要である。

 アイドルもプロ棋士も目指す人の多さに対してその門は狭い。さらに子供は特に親の気持ちの変化には敏感だ。親の願いも期待も分かるから「目指したい」も「辞めたい」もなかなか言い出せなくなってしまう。どうやら善家はそんな子供たちと接する中で、自分にできることを模索していたようだ。

 配信中に意識を失って倒れ、死んだように思えた善家は意外にも生きていた。殺人事件が起こっていなかったというシリーズの中でも珍しい展開に驚いてしまったが、彼が伝えたかった「自分で決めた道を、自分なりに努力して納得するまでやり切る」というメッセージは生きているからこそ響くものだろう。

■放送情報
『相棒 season22』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00〜放送
出演:水谷豊、寺脇康文、森口瑤子、鈴木砂羽、川原和久、山中崇史、篠原ゆき子、山西 惇、田中隆三、松嶋亮太、小野了、片桐竜次、杉本哲太、仲間由紀恵、石坂浩二、美村里江、新納慎也、真飛聖ほか
脚本:輿水泰弘
監督:権野元
制作:テレビ朝日/東映
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
公式X(旧Twitter):@AibouNow
公式Instagram:@aibou_official

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