『君が心をくれたから』物語に射し込んだほんのわずかな希望の光 雨が選んだ“幸せな後悔”
同時に今回のエピソードでは、もうひとつ物語の流れを変えるかもしれない一瞬が訪れる。それは終盤のバスのシーンで、追いかけてくる太陽を見ないようにしてバスを降りずにいる雨に千秋(松本若菜)がかける「本当にいいの?」の言葉。その瞬間に、向かいの席に座っていた日下の頭のなかに一瞬だけ蘇る過去の回想。“あの世”からの案内人として、常にミステリアスな出立ちで、ある種の異物のように物語のなかに佇む彼にも、“後悔”をするただの人間であった時代が確かに存在したということが、ここではっきりと示されたのである。
すでに雨のために何かできることはないかと苦しむ千秋も然り、今回雨に“幸せな後悔”を選択させる日下も然り、彼らのバックグラウンド、あるいはその経験が、もしかしたら雨と太陽の運命を変えてくれるのかもしれない。そんな淡い期待を抱いてしまう。もしそうはならず、このまま雨は五感を失い続ける道しか残っていないのであれば、きっと司と太陽のやり取りのなかであった、「太陽の作った花火を見たい」という雨の願い、それが雨の視覚に残る最後の景色になってしまうのだろう。そうなったとしても、その時に雨の隣に太陽がいれば充分なのかもしれない。
■放送情報
『君が心をくれたから』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:永野芽郁、山田裕貴、斎藤工、松本若菜、白洲迅、出口夏希、真飛聖、遠藤憲一、余貴美子
脚本:宇山佳佑
主題歌:宇多田ヒカル
演出:松山博昭
プロデュース:草ヶ谷大輔
©︎フジテレビ
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