『お別れホスピタル』岸井ゆきのが向き合う最期の日々 『透明なゆりかご』チームの安心感

 人の数だけ選択があるのは、死に関しても同じ。本来ならば、どこで、誰と、どのように最期を迎えたいかは個人の判断に委ねられている。だが、その希望が叶えられるとは言い切れず、思い通りにならないことも多い。特に終末期病棟にはそれが顕著だ。住み慣れた場所ではない病院でせめて最期まで自分らしく生きようとしても、耐え難い痛みが襲ってきたり、そもそも認知症などで意思表示が難しい患者もいる。そんな中で、彼ら彼女らが最善の日々を送れるように努めるのが現場の医療従事者たちだ。本作の主人公・辺見歩(岸井ゆきの)は療養病棟に勤めて2年の看護師。とてもサバッとした性格で患者からも好かれているが、人の死にはどうしても慣れず、思い悩むこともある。それは、消化器内科から療養病棟に異動してきた医師の広野誠二(松山ケンイチ)も。患者とどう向き合うべきか、向き合うべきだったのか。答えの出ない問いに2人はそれぞれ違う立場で向き合うこととなる。

 その中で見どころとなってくるのが、舞台『髑髏城の七人 Season風』、映画『大河への道』に続き、3度目となる岸井と松山の共演だ。2人にはどこか近しいものを感じる。どちらも淡々とした穏やかな空気感に包まれているが、底知れなさもあり、作中で徐々に熱を帯びていく演技に圧倒されることも多い。生と死という究極のテーマを背負った2人からどんなやりとりが生まれるのか、楽しみだ。また『透明なゆりかご』もそうだったが、とにかく患者やその家族を演じるキャストが豪華。自身の、あるいは大切な人の死に直面した時、人間の心はどう揺れ動くのか。古田新太、泉ピン子、鷲尾真知子、きたろう、筒井真理子といった俳優陣の名演に胸を打たれることは間違いない。

 自分はどのような最期を迎えたいか、ドラマを観ながら彼らと一緒に考えていこう。思い通りにはいかないかもしれないが、考えることにきっと意味がある。「どう死ぬか」は、「どう生きるか」ということでもあると思うから。

■放送情報
土曜ドラマ『お別れホスピタル』
NHK総合にて、2月3日(土)スタート 毎週土曜22:00〜22:49放送【全4話】
出演:岸井ゆきの、松山ケンイチほか
原作:沖田×華
脚本:安達奈緒子
音楽:清水靖晃
制作統括:松川博敬、小松昌代
演出:柴田岳志、笠浦友愛
写真提供=NHK

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