玉置玲央が『光る君へ』で放つキケンな魅力 華やかな布陣の中でも際立つ存在感
いま、玉置玲央に見惚れている。これは私だけではないだろう。放送中の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)で初回から大暴れしては話題をさらったのだ。
まだはじまったばかりの本作をとおして、彼のその“キケンな魅力”に触れることができた視聴者は少なくないと思う。映画やドラマで主役級のポジションを担う華やかな布陣の中でも、圧倒的に彼の存在が際立っているのだ。
本作で玉置が演じているのは藤原道兼。右大臣である藤原兼家(段田安則)の次男であり、のちに最高権力者となる藤原道長(柄本佑)の兄だ。いつも穏やかで才能にあふれる長男の道隆(井浦新)とは対照的で、つねに苛立ちを抱えた人物だ。主人公・まひろ(吉高由里子)の母を殺めたのも彼であり、とにかく問題の多い人間である。
冒頭に記しているように、第1話から大暴れ。激情型な彼はことあるごとに自身の鬱憤の捌け口に弟を利用し、果ては無害で無抵抗な人間を斬り捨てる始末。あまりにキケンだ。
しかしだからといって、これをただ筋書きどおりに演じただけでは、あれほどまでの“恐怖の初回”は生まれなかっただろう。玉置は各シーンにおける道兼の感情ごとに声色のみならずその質感までも自在に操り、アップで捉えられた際の表情によるパフォーマンスは目が離せないものだった。表情筋の細部にまで、道兼の心情と、その演じ手である玉置の意志とが宿っているのが感じられて鳥肌が立ったほど。俳優にはいろんなタイプがいて、当然ながら俳優ごとに演技のアプローチは違う。だから一概に何がベストなのかなど断言できやしないが、彼の“演じる”という行為に対する意識の高さに私たちが打ちのめされた結果が、あの初回なのだと思う。