山下智久が体現する“ダサさ”が愛おしい! 『正直不動産』シリーズで役者として新境地へ
これまでも山下は、『野ブタ。をプロデュース』(2005年/日本テレビ系)や『プロポーズ大作戦』(2007年/フジテレビ系)など、コミカルな役も演じてきた。だが、やはり山下と言えば『クロサギ』(2006年/TBS系)や『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(2008年ほか/フジテレビ系)などのクールでスマートでカッコいい役のイメージが強いように思う(余談だが、漫画『クロサギ』の原案者・夏原武氏は、漫画『正直不動産』でも原案を担当しており、なんだか山下との縁を感じて面白い)。
そんなクールな印象がある山下だからこそ、この永瀬財地という役が、より映えるように感じる。これまで、“千三つ屋”と呼ばれるのにふさわしいほど大嘘つきだった永瀬が、嘘を全くつけない真逆の人間になる。だからこそ、クールでカッコいいイメージが強い山下が、真逆のダサくて泥臭い役を演じるのは、ある意味ピッタリなのだ。そのギャップこそが役と繋がり、さらにキャラクターに深みを与えている。
永瀬というキャラクターは、これまで山下が演じてきたコミカルな役とは一味違う。“風”という演出があることで、コミカルさがより強い。そして、おそらくこれまで山下が演じた中で、最もダサい役なのではないだろうか。言い換えれば、人間味が溢れているように思う。
そもそも永瀬という男は単純にいいやつではないし、嘘をつけないとわかっていながらも毎回抗おうとするし、タワマンからボロアパートに移った現実を受け入れられないし、何かとカッコつけようとするし……。このダサさに、あの山下が全身全霊で挑んでいるのだから、それはもう愛おしさが爆発する。そして、山下自身も役者としての幅と可能性が、より一層広がったに違いない。
永瀬財地に山下智久が混ざることで、いい意味で漫画とはまた違った“永瀬財地”が爆誕した。原作の作画を担当している大谷アキラ氏も「すごくいい意味で漫画とドラマが別物で」「気づいた読者がいたかもしれませんが、シーズン1の放送中に作画した回は、山下さんに引っ張られたのか、永瀬をいつも以上にイケメンに描いてしまって」(※1)と評するほど、山下は永瀬というキャラクターに影響を与えている。
山下自身もまた「アドリブ、結構多いんですよ。多すぎて…(笑)。(中略)ほぼ全部自分で作っちゃったシーンとかもあります。お客さまに向かって本音をぶちまけるというシーンだったんですけど」「結構な長ゼリフを即興で、ラップのごとくぶちかましました(笑)」(※2)と明かしていた。つまり、山下だからこその永瀬、山下だからこそのドラマ『正直不動産』になっているのだ。
昨今は役者として、日本だけではなく海外でも活躍している山下。『正直不動産』を機に、今後国内外でお茶の間の親しみやすい愛らしい役も増えていくかもしれない。そして、この『正直不動産』がご長寿ドラマシリーズになることも、また密かに期待している。
参照
※1. https://toyokeizai.net/articles/-/721928
※2. https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-2644743/
■放送情報
『正直不動産2』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:山下智久、福原遥、市原隼人、泉里香、松本若菜、長谷川忍、板垣瑞生、松田悟志、馬場徹、伊藤あさひ、財津優太郎、山﨑努、大地真央、倉科カナ、高橋克典、草刈正雄ほか
原作:大谷アキラ(漫画)、夏原武(原案)、水野光博(脚本)
脚本:根本ノンジ、清水匡、木滝りま
音楽:佐橋俊彦
主題歌:小田和正 「so far so good」
制作統括:黒沢淳(テレパック)、山本敏彦(NHKエンタープライズ)、長谷知記(NHK)
プロデューサー:室谷拡(テレパック)、樋渡典英(NHKエンタープライズ)
演出:川村泰祐(アンドリーム)、金澤友也(テレパック)ほか
写真提供=NHK