山下智久が体現する“ダサさ”が愛おしい! 『正直不動産』シリーズで役者として新境地へ

 正直、「私は嘘がつけない人間なんで」と泥臭くもがく山Pは最高だ。

 『正直不動産』が、ドラマ10『正直不動産2』(NHK総合)として帰ってきた。本作は、“千三つ屋”とも呼ばれる土地・家の売買の仲介人を題材にした、“笑いあり、涙あり、ためになる不動産知識もあり!”のビジネスコメディードラマ。“嘘のつけない”不動産営業マン・永瀬財地(山下智久)とカスタマーファースト命の月下咲良(福原遥)の凹凸コンビが奮闘する姿を描く。

 2022年に放送されたシリーズ第1弾が、ドラマファンを中心に視聴者の心に刺さったことは記憶に新しい。かく言う私も、その一人だった。ストーリーが面白いのはもちろん、コミカルさとシリアスさの塩梅が実に妙で、またテンポも良いため、飽きることがない。そして、観終わったあとのじんわりと心が温まる感じも心地よく、明日からも仕事や学校を頑張ろうという前向きな気持ちが芽生えてくる。

 さて、そんな視聴者をハッピーな気持ちにさせるこのドラマ。一番の魅力は、なんと言っても登場人物一人ひとりのキャラクターの濃さではないだろうか。加えて、役者たちのイキイキとした芝居がまばゆい。その中でも特に、主人公・永瀬財地を演じる山下智久が最高なのだ。

 シリーズ第1弾冒頭では、永瀬はまだ「ライアー永瀬」と呼ばれる、嘘もいとわない巧みな話術で登坂不動産の成績No.1をキープしてきた(最低最悪の)営業マンだった。そんな嘘で塗れた永瀬が、ひょんなことから(まるでこれまでの悪事のツケが回ってきたかのように、バチが当たってしまい)正直にならざるを得ないところから物語は始まる。

 なぜ嘘をつけないのか? それは、嘘をつこうとすると嘘みたいな強風が彼に吹いてきて、無理やり本当のことを口走らせてしまうからだ(この風を吹かせる専門のスタッフさんがいるというのだから、この作品での風の重要性と風という演出への愛を感じる)。(※)

 この強風のせいで、永瀬は隠したい本音をところかまわず曝け出させられる。公私ともにさまざまな人たちを激昂させ、営業成績も社会的地位もあれよあれよと落っこちていくのだが……。そのぶん彼は、人の心と情熱を取り戻し、カスタマー一人ひとりと泥臭く向き合う営業マンに成長していくのだ。

 そんな哀れで不憫で愛おしい永瀬を演じる山下からは、役者としての新境地を感じる。永瀬財地というキャラクターに山下を配役したキャスティングの方に「ありがとうー!!」と叫びながら拍手を送りたいくらい、コミカルな山Pはダサくて愛らしい。

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