タイトルで引き込まれる『ソンサン ー弔いの丘ー』 欲望渦巻く事件と滲み出る人間らしさ

 また、異母兄弟として突然現れるヨンホは、不気味な表情と容姿から周囲に警戒されてしまうのだが、話が進むにつれ、姉に対して不器用な愛情表現を見せていることがわかってくる。自身の出生の秘密から、両親に過保護に育てられてきたことが一連の事件の発端となっているのだが、ソハから憎まれ、警戒されてもソハを守ろうと必死になる姿には心を打たれてしまう。

 そして、ソンサンを巡った一連の殺人事件を捜査するソンジュン(パク・ヒスン)とサンミン(パク・ビョンウン)、2人の刑事もそれぞれ葛藤を抱えている。2人は先輩後輩の親しい間柄であったが、ソンジュンの息子がサンミンの足を刺してしまったことをきっかけに、関係がこじれてしまった。サンミンはソンジュンの上司になったものの、足が不自由になったことで気が落ちてしまい離婚。仕事でもソンジュンより評価が低いことに劣等感を抱えていた。一方、ソンジュンも自分の息子と向き合うことができず、後輩に一生の怪我を負わせてしまったことを悔いている。ソンサンの事件を解決する過程でわだかまりが解けていくのだが、その中で起きる2人の感情のぶつかり合いも、人間らしさが滲み出る注目すべき点と言えるだろう。

 登場人物たちは、家族との歪んだ関係によって生じた傷に目を背けたまま、人生を生きている。家族への愛情不足、あるいは過度な愛情といった、家族を思いやる気持ちのバランスが彼らに大きな影響を与えているが、事件が起きたことで現実と向き合い、乗り越えようと動き出す姿も描かれている。

 そして周囲の人間に恵まれてこなかったソハは、大学の講師を辞め、新たな一歩を踏み出していく。一視聴者として、これからの彼女の人生では、明るくて温かい人々に囲まれていてほしいと願わずにはいられなかった。

参考
※ https://encykorea.aks.ac.kr/Article/E0028743

■配信情報
『ソンサン ー弔いの丘ー』
Netflixにて独占配信中
出演:キム・ヒョンジュ、パク・ヒスン、パク・ビョンウン
原作・制作:ヨン・サンホ、ミン・ホンナム、ファン・ウンヨン

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